宵夜の夢に.。7 ページ8
あんな空間に押し込められていたら、誰だってそうなるだろうか……。在りもしない“もしも”を追いかけ続け、やがては希望を忘れていくのだろうか。
いや、漸く宿った希望の光を摘み取るのがあのゲームだったな。
なのに、私は――。
「こんな所に居ましたか……。随分探したのですよ?」
探索のつもりが、私はまるで現実から逃げるのと同じように、深い樹海の最中に居た。
カイさんは、この世界の地理が頭に入っているようで、随分探したと言う割にはすんなりと私の場所を捜し当てたようだった。
今まで考えていたことを隠すように口から出た言葉は、私の意に反する物だった。
「すまない。綺麗な蝶を追っていたのだけど道に迷ってしまったようで……」
在り来たりな嘘。見え透いた嘘。なのに――。
「……そうでしたか。では、丁度良いタイミングでしたね」
カイさんは一瞬、何か言いたげに口を開いたが、ただ普通に返事を返してくれた。それが、優しさなのか何なのか知る術を持ち合わせては居ない。
「カイさんは、何時から此処に居るんですか?」
獣道をカイさんと並んで歩いている途中、何となく質問した。探索中に感じたことを確かめたくて。夢の割には、嫌に現実味が在るからだ。五感がしっかり働くし、私とカイさん以外にも、動物等が居た。
「そうですね、あの日以降なのは確かです。ですが、それよりもここ数日、あなたが何かに魘されるように寝付きが悪かった方が心配です。何かの病かと慌てましたが……、一種の記憶喪失ですかね」
あの日以降と言うのは、ホエミー等主催のメインゲームの事だろう。然し、加えて返ってきたのは、予想外の答えだった。
其れでは、まるで私もずっと此方に居るみたいではないか。それに、記憶喪失? 訳が分からない。
「ちょっと待ってくれ、私が記憶喪失だと?」
「はい、記憶喪失です。一時的な物なのか、永久的な物なのかは判りませんが、私の名前はしっかり覚えていてくれているようなので、断片的な物かと……」
「じゃ、じゃあ、私は何時から居るんだ? 私は一体……、ギンやケイジさん達は……?」
首を傾げるカイさんに、困惑する私。こんな事になるなら、やっぱり訊かなければ良かったんだ。
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戒さん好きのリーディア - 夢主に一票!同じカイさんの小説作者として、よろしくお願いします! (2018年3月26日 19時) (レス) id: d2b4ff70fa (このIDを非表示/違反報告)
Raimu - 夢主に1票です!!! 毎回毎回楽しく読ませて頂いています!! 更新頑張ってください! (2018年3月4日 23時) (レス) id: d43f7c840c (このIDを非表示/違反報告)
のえる - 夢主に1票!面白かったです!(>_<) (2018年3月4日 22時) (レス) id: 05cf06e837 (このIDを非表示/違反報告)
華歌黒(プロフ) - 夢主に一票で、更新頑張ってください (2018年3月3日 20時) (レス) id: caf1f4a4c9 (このIDを非表示/違反報告)
Ripper Mac - 更新頑張ってください…!ガチで一話目から涙出てきました…((本当です。 すごい気持ち入れて見てしまいました…。楽しみにしてます!! (2018年3月2日 22時) (レス) id: 0d7940a4a4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名: 夢匣 | 作成日時:2018年3月2日 16時