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宵夜の夢に.。1 ページ2

――嗚呼、またユメだ。

「あなたって人は……いつまで私に縛られているんですか?」

 辞めてくれ。もう、辞めてくれ……。どうして……責めもせず、何時の夜も逢いに来てくれるんだ。

「ほら、涙を拭いてください。……素敵な顔が台無しです」

 温かいカイさんの体温を感じることは、もう不可能なのに。
 カイさんは、私に手を伸ばしてくれる。私を掬ってくれる。私の背を押してくれる。
 其れが……喩え、夢でも。

「困りましたね……。あなたのその湯水が如く溢れる涙は、私では止めれないようです。どうしましょう」

 違う。違うんだ。そうじゃなくて……。
 明後日の方を向き、右手を顎に考える……カイさんの姿が……。

「そんなに、しっかりと服を握らなくても……私は何処にも逃げませんよ」

 逃げません、なんて……。カイさんが、私の前に居ることがなにより嬉しい。
 私以外に見えなくても、私以外に触れられなくても……カイさんは私の中に存在を残している。

「ああ、私と二人きりだから嬉しすぎて……涙しているのでしょうか?」
「すみません。……悪ふざけで言いました。私なんかを想っても……あなたに得なんてありません」
「早い内に、忘れてくれて構いませんよ」
「あなたに会えないとなると、少し寂しいですが……」
「それで、あなたが涙に溺れなくなるのなら私はそれが良いです」



 どれだけ優しいんだ。
 どんな嘘吐きより、よっぽど好ましい。
 ……少し、非道徳的な部分もあったけれど、こんなところに閉じ込められたら、誰だってそうなるだろう。

 自分が死にたくないから、人は嘘を吐く。
 他人を死なせたいから、人は嘘を吐く。
 死なないために素直に発言する事をする者は少ない。
 死にたくないと、一言言えば良いことも、嘘で塗り固め始めたらお終いなのだから。


「おや? もう直ぐ夜明けですね……」

 私は今日も、別れと出逢いを一人夢に繰り返す。




「ふむ、朝ですよ。起きてください」


 だから、この声はきっと夢現な私の空耳……。

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戒さん好きのリーディア - 夢主に一票!同じカイさんの小説作者として、よろしくお願いします! (2018年3月26日 19時) (レス) id: d2b4ff70fa (このIDを非表示/違反報告)
Raimu - 夢主に1票です!!! 毎回毎回楽しく読ませて頂いています!! 更新頑張ってください! (2018年3月4日 23時) (レス) id: d43f7c840c (このIDを非表示/違反報告)
のえる - 夢主に1票!面白かったです!(>_<) (2018年3月4日 22時) (レス) id: 05cf06e837 (このIDを非表示/違反報告)
華歌黒(プロフ) - 夢主に一票で、更新頑張ってください (2018年3月3日 20時) (レス) id: caf1f4a4c9 (このIDを非表示/違反報告)
Ripper Mac - 更新頑張ってください…!ガチで一話目から涙出てきました…((本当です。 すごい気持ち入れて見てしまいました…。楽しみにしてます!! (2018年3月2日 22時) (レス) id: 0d7940a4a4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: 夢匣 | 作成日時:2018年3月2日 16時

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