その選択は吉か凶か ページ2
「あの、爆心地さん。ちょっと宜しいですか？」
「あ？」
時刻は午後5時。珍しく公務員らしい時間に帰れると思っていた矢先、すみれ色の髪の女が話しかけてきた。
「んだよ、モブ女」
「貴方と同期のヒーロー、アーフルです。経理担当です。…それでですね爆心地さん、貴方名義の領収書について少々言いたいことがあるのですが、ここではなんですので夕食、ご一緒にいかがですか？」
はぁ？ 新手の誘いか？ クソうぜぇ。
「私としてはこちらで話しても良いのですが、爆心地さんは困るでしょう？」
そう言って見せてきた領収書に俺は息を飲んだ。
『ラブ◯俗 ニュー愛』
…結局、俺とモブ女-アーフルはヒーロー御用達の個室のある居酒屋に行った。話をすることが目的だからと酒だけ先に頼む。
「では、本題です。…こちら、接待なら経費で落とせますが、接待でないなら…」
「接待だわ！」
爆心地は思わず言い返した。なんの根拠もないにもかかわらず。
「…そうですか。しかし、調べさせて頂いたところ、この料金は1人分ですし、この日のこの時間、爆心地さんは既にオフでしたよね？」
「あぁ？ んでそんなこと言えんだよ」
「私の個性、お忘れですか？」
そう言って彼女は、空中で構えると巨大なキーボードと液晶が現れた。しかし、透き通ったそれはアーフルは触れられるが、側にある机は通り抜けている。
「あー、オメェが古文書(アーカイブ)のやつか」
「えぇ。なので、事務所のヒーローの出勤情報、過去の経理情報が入手出来るんです」
得意顔でそう言い放つ彼女に、爆心地はため息をつく。
「はぁ…降参だ。認めるよ、悪かった。経理に私用のものを送って」
「いえ、そこに関しては別に気にしていません」
「はぁ？ じゃあなんだよ」
怪訝そうな顔をして問う。
「私が気にしているのは世間の目です。検挙率急上昇中で高額納税者ランキングに名を刻もうとしているプロヒーロー爆心地がそんなところに通い詰めているなんて知ったら…」
「…チッ。だから、なんだよ。何が言いたいんだよ」
脅すのか…？
「はい。つまり、
…私にしませんか？」
………は？？？
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作者名：ゆぅあめ | 作成日時：2019年1月6日 20時
