君の色をもっと。

薄明色 <はくめいいろ> ページ4

『すみません、運んでもらっちゃって。』
「全然いーすよ！勝手にやったことだし！」

や、やさしい……

ていうか伊沢さんの重い機材を持つ腕に、血管が浮かんでてつい見とれてしまう。

うわーやばい、かっこいい。


ゴト、と少し控えめな音をたてて着地する機材。


ああ、伊沢さんにこんなことさせてしまうなんて！
つい浮かれてしまったけど、ハッと我に返る。

ありがたいけど、申し訳ないな……



この所、QuizKnock、とりわけ伊沢さんはYouTubeにテレビにイベントに社長業に、引っ張りだこだ。

YouTubeのコメント欄やTwitterには、最近の伊沢さんを心配するコメントもちらほらあって、ふわふわしてた自分が急に少し恥ずかしくなる。


そこで私の脳が完全に冷静さを取り戻し始めたのか、やっとまともに思考ができるようになった。

……うん。なんとなくだけど私がQKファンであることは伏せておこう。
余計疲れさせてしまう気がする。



次の会話を探して、またついすみません、と口走ってしまいたくなるが、謝ってばっかりだったので言葉を飲み込んで感謝の言葉を伝える。

「ありがとうございました！力ありますね〜」
「はは、まぁ男ですから！」

にかって効果音のしそうな笑顔が眩しい。
今日のイベントを終えて疲れてるはずなのに、動画やTwitterで知るとおりのすごく紳士な人だ。


教室を出ようとして、2人して出口に向かう。
窓から入ってくる光はさっきよりもずっと暗く弱くなっていて、日が落ちたことを理解する。

「今日の早押しもすごかったですね〜。クイズ得意なんですね！めっちゃ人気だったし……笑！」

ちょっとペテンをする私。
ふふふこういうの得意なのよ


「あぁ、一応僕クイズ王とか呼ばれていまして。あーいうこと10年くらいやってるんで、慣れですよ慣れ。笑」


知ってます。
中一からクイズやってるんですよね。

って言いたいのを我慢して。

「10年！ながってぅわっ！！

言葉を言い終わるか言い終わらないかくらいで、冷静さを取り戻したフリをしていた脳が、やっぱり意識は完全に伊沢さんにいってしまっているようで、出口のすぐ側にあったダンボールに気付かずにつまづいてしまった。


っやばーーーー転ぶ……！


どんどん近づいてくる床、あぁもうだめだって思ったのもつかの間、体制を完全に崩した私の体が重力に逆らうようにして止まった。


え、あれ？

韓紅 <からくれない>→←茜色 <あかねいろ>

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