【鬼滅の刃】陽光の巫女

怖気 ページ9

.






私に縋りつく善逸を何とか引きはがす。
　

涙と鼻水で顔すごいことになってるぞ。

戦闘終わったら湖の水で顔洗わせるか…。




「善逸きいて。私の近くにいたら鬼が寄ってくる。でも水の中に入れば少しは匂いをごまかせると思うの」


「…それって、Aちゃん湖の中に入るってこと！？」
　

頷くと、善逸はすごい勢いで焦りだした。

首がもげるんじゃないかってくらいの速さで頭を左右に振る。



「ダメダメ！ちょーダメ！湖の鬼は水の中で素早く動き回れるハズでしょ！？いくら神通力が使えるからって、Aちゃんは人間なんだよ！？それに潜ったら呼吸だって使えないよ！？死んじゃうよ！？」


「あーもう落ち着いてって。呼吸だかなんだか知らんけど、大丈夫。勝算がなきゃこんな提案しないって。ヤバい奴だって思ったら一旦引くから。ね？」
　


なだめるようにそう言うと、善逸は「わかった…」と小さく頷いてくれた。
　

気配からして水の鬼は相当強い。

昨日の鬼や奥にいる鬼が雑魚に思えるほど、血の気配が濃いのだ。



「こりゃ相当喰ってるな…」

「喰ってる…？」


「いや、こっちの話。…善逸、奥の鬼は頼んだよ」
　

善逸の肩に手を置いて、震える善逸がゆっくりと頷くのを確認する。
　


ごめんね、善逸。

水の鬼もそこまで強くなければ、私が二体とも倒せたかもしれない。


私がもっと強ければ。
　


ごめん。ごめんね。


私、怖気づいてるんだ。
　


水の鬼から漂う死の気配が強すぎて、ほかの鬼と同時に相手にしたら死ぬんじゃないかって。


もしかして、一対一でもヤバいんじゃないかって。
　



神様の力を借りれるのに、私はまだその力をうまく使える自信がない。
　

鬼舞辻だって倒せるくらい強い力のはずなのに。
　


もっと器用にこなせることができたら、怖くて震える善逸を無理やり命の危険にさらすこともなかったかもしれない。
　




私が、不器用なばっかりに…ッ。









「Aちゃん？」
　


ハッと顔を上げる。
　

いつの間に噛んでいたのか、唇が切れて血の味がした。

信頼→←霞湖

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す