殺し屋やってるらしい。【浦島坂田船】 (ページ26)

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killing night 25 ページ26

「なー、A、遊ぼー」

『いいけど、こんな足だから何もできないよ。』

「やったらAのこと教えてや！」

『私のこと、？』

うんと返事をする坂田の目はキラキラと輝いていていた。

『如月、A。歳は多分18だよ。殺し屋を始めて7年くらいだと思う。』

「多分って？」

『私、昔のことあまり覚えてないんだ、歳は先生がそう言っていたから。』

「先生？」

『私に、殺しを教えてくれた先生。』

先生は空っぽの私に一から何もかも教えてくれた。
そんな先生との記憶も随分前のことだったけれど。

『期待に添えられなくてごめんね、私が教えてあげられるのはこれくらいだよ。今度は坂田のこと教えてよ。』

私は、何も知らないんだから。
自分がなぜ、あの場所にいたかも、どうして殺し屋になったのかも何一つ知らないんだから。

「うん、ええよ。俺のことAに全部教えたる。」

そう言って一度瞬きをしてから坂田はゆっくりと話し始めた。

「坂田悠。歳は27歳。殺し屋は5年くらいやな。……俺な、殺し屋になる前は普通の家におったんよ。丁度Aくらいの歳の時に家族みんな殺されたんよ。」

私が想像していた話よりももっと深い話を坂田は続けた。

「うちは、割と裕福で家もでかい方やったから金品を盗むために殺されたんやと思う。俺はな、ずっと隠れとってん。見とったんよ、ずっと母さんと父さんと兄さんが殺されるとこ。なんも、抵抗もする暇もなく殺されるとこ。」

私は特に言葉を発することなく聞いて、次の坂田の言葉を待った。

「俺な、家族を殺してるそいつを見てな、カッコいいって思ったんよ。その後に俺もAみたいにある人から教わって今ここにおる。」

聞こうと言うことも頭になかったこと、私の頭では到底想像もつかなかったことを坂田は一語一句こぼさずに言い切った。

「俺、おかしいかな？」

『そんなことないよ、おかしくなんか、ないよ。』

やっぱり坂田は純粋だ。
そこらへんにいる小さな子供よりも濁りのない水晶玉よりも何よりもきっと純粋だったんだ。

「ふふ、ありがとうA」

またいつもみたいに笑っていた。

「Aも、昔のこと思い出せたら教えてな！」

『う、ん。』

ごめんね、ごめんね坂田。

そんな日はきっと来ないよ。