殺し屋やってるらしい。【浦島坂田船】 (ページ22)

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killing night 21 ページ22

足を怪我していることに気が付かなければ痛いともそんなに思わなかったはずだし、一度寝てしまうとめっぽう身体の動きが機敏ではなくなる。

だからこんな形で誰かに身体を支えられるなんてとても久しぶりだった。

「何してんの、こんな時間に。」

私を殺したい程恨んでいるというあの人が目の前にいる。
サラサラの茶髪と深緑の瞳がとても美しくて吸い込まれそうで、この人と目を合わせるだけで今の私は殺されそうだなとも思えた。

『あなたがうらたん…？』

「浦田渉。その気色悪い名前で呼ぶな。」

ムッと顔をしかめていかにも機嫌が悪そうな声で返された。

『たぬきが、いたから。』

「やまだのこと？」

変わった名前をしているたぬきだった。どうやらうらたが飼っているたぬきらしい。
先程から猫のようにうらたにスリスリとしている。

１秒。

彼と目が合ってから彼は自分の手を紺色の私の髪に指を絡めた。

『私を、殺さないの？』

ここで死なずに生きていくには極力この人に会わないで怪我を治して出ていくのが妥当な判断だと思っていた。だが、当の本人は少しも私に手を出すそぶりがないのだ。

「もう、いい。萎えた。」

そう言って少し俯いた。

「お前、名前なんだっけ。」

『……如月、A』

自分から聞いたくせに彼はふーんと言い私の髪をいじるのを続行した。

「A、」

ドクン。
一度心臓が飛び跳ねたような感じ、胸を押さえてみるが特に異常はない。

何だろう…。

「もう、部屋戻りな。冷えるから。」

殺されるだなんて心配をしていた私は何だったんだろうか。
彼はふっと笑うし、普通に優しかった。

部屋に一歩足を踏み入れた時あっ、と思い出したようにもう一度廊下へ顔を出す。

「うらた、仕事横取りしてごめん。」

殺して、遺体を持って行ってが殺し屋としてなんぼのものだから今考えたら申し訳ないことをしてしまった。

扉を閉めきってから扉にもたれかかる。

『なんだ、ろう。』