・ ページ21
ab side
「ねえ、阿部ちゃん。ここがどこだか覚えてる？」
「えっ…？」
息も吸えないくらい苦しいはずなのに、なぜだか翔太の声だけはハッキリと聞き取れる。
「ここ、見覚えない？」
そう言われて、自分が動ける範囲で辺りを見渡した。
特にめぼしいものがある訳では無い。
それどころかほとんどものがない、広い部屋だ。
けれどどこか懐かしい気がしてくる。……何故だ？
そう思った瞬間に、私の頭が締め付けられるように痛み出した。
いや頭だけじゃない。
胸が、胸が締め付けられるように苦しい。
苦しくて痛い。まるで誰かに心臓を握りつぶされているかのように。
それに……体が熱い。燃えるように熱いのだ。
「まあ部屋だけじゃ分からないよね。」
「しょ、翔太…」
ふと気がつくと翔太が私を抱き抱えて立たせていた。
「見て、阿部ちゃん」
翔太に支えられて見たのは外の景色。
真っ暗な外の世界を、月明かりが照らしている。
今まで気づかなかったが私はだいぶ高い所にいるらしい。
……あれこの景色
ぼんやりとした世界が急にハッキリと見えだした。
あぁ、なんという事だ、私はここを知っている。
「ここは…」
「気がついた？？そうだよ阿部ちゃん。」
「あの方の…最期の場所。」
目の前に広がる景色は、
私や翔太が過ごした場所であり……
あの方が命を散らした場所だ。
そう認識したその瞬間私の身体は震え出した。
私の中でフツフツと沸き上がる感情。今まで隠していた。
思い出さないようにしていた感情だ。
怒り、悲しみ……そして、憎悪。
「阿部ちゃん、見て。ほらあそこだよ。」
「あっ、あぁ……あぁ！！」
翔太に言われて部屋の中に視線を戻した。
あぁ、そうか。ここはあの方がいたあの部屋だったのか。
あの方が……あの方が……
その瞬間、当たりが炎に包まれた。
「あっ……あぁ。」
熱い、熱い、熱い……身体が熱い。
目の前の炎は一瞬で大きくなった。
逃げなければ！このままだと2人とも……あれ？
「翔太……？翔太！？」
先程まで私を支えていたはずの翔太がいない。
慌てて当たりを見渡すがどこにも見えない。まさか外に飛び降りたのかと思ったその時だった
「亮平──」
「────っっ！！？？」
激しく燃え盛る炎の中から現れたのは、翔太では無かった。
「あっ、あぁ……」
「亮平……亮平……」
「──様！？」
私の名前を呼んでいたのはあの方だった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1200人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
さくら(プロフ) - orikacoさん» コメントありがとうございます！温かいお言葉、本当にありがとうございます、励みになっております！これからも亀更新ではございますが楽しんでいただけるよう精進します！ (2023年2月18日 23時) (
レス) id: 1995ada5eb (このIDを非表示/違反報告)
orikaco(プロフ) - お忙しい中、更新ありがとうございます！久しぶりの更新に歓喜しております( ˊᵕˋ*)さくら様のペースで大丈夫なので、これからも頑張って下さいね。気長に楽しみにしています。 (2023年2月8日 21時) (レス) @page20 id: 95f4d7b396 (このIDを非表示/違反報告)
さくら(プロフ) - 鳥本さん» コメントありがとうございます。お礼を伝えるのが大変遅くなってしまい申し訳ありません。温かいお言葉本当にありがとうございます！ (2023年2月8日 21時) (レス) id: 1995ada5eb (このIDを非表示/違反報告)
鳥本 - すごく面白いです (2021年12月5日 19時) (レス) @page16 id: 68c869632c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：さくら
| 作成日時：2021年6月12日 18時
