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翔太は話を続けた。
｢阿部ちゃんは頭がいいし、警戒して俺が出すものに手はつけないだろうなーって思った。だから、これ。｣
そう言って彼が見せてきたのは淡い桃色の…丸い形をした小さな塊。そして、その塊から発される甘ったるい匂い…それは今部屋を満たしているものと同じだった。
｢お香…？｣
｢正解。でもただのお香じゃないよ。このお香は、ちょっとしたお薬も入っててね、人の思考回路を鈍くしたり身体の自由を奪う力があるんだ。｣
翔太の声を聞きながらも、頭は上手く働かない上に顔をあげるのもしんどくなってきた。
ダメだ力が入らない。それでも帰らなきゃ…
少しでもお香の香りを吸わないようにしようとするけれど、既に遅かった。
私の身体はどんどん自由を奪われていく
ダメだ、こんなところで倒れては行けない。
帰らなきゃ…みんなが待つ所へ…
帰らなきゃ…
帰ら…
あれ…
帰るって…どこへ？
誰の…ところ…？？
私は…あれ？なんで…？
何かが私からこぼれ落ちていくようで…
落としてはいけない、大事ななにか…
抗おうとしてるのに頭も身体も動かない…
そんな私を、翔太はニヤニヤと笑いながら、右手で私の顎をつかみ無理やり目線を合わせるような形を取った。
『阿部ちゃん』
ぼんやりとする意識の中、甘く優しい翔太の声が私の中にじわりじわりと入ってくるようで、まるでその声に身体が支配されていく感覚に陥った。
あれ…翔太いつの間に…目…？
長い髪で隠されていたはずの彼の目が、私を捉えている。
翔太の目…あの時と同じように光って…あれっ…あの時って？
私は、なにか大事なことを…忘れている気がする…
｢しょ…う…た…｣
『阿部ちゃん、俺らの仲間になろうよ。俺は阿部ちゃんと一緒に…あの方の無念を晴らしたいんだ。その為には阿部ちゃんの力が必要なんだ。』
あの方…
無念…
あぁ…そうだ。私たちを育ててくれたあの方…
あの方は…死んだ。あの時、異能を持たぬ人間たちに攻められて…。夢半ばで、あの方は…
「あっ、あぁ…あぁ…」
息を吸うのが苦しい…でも頭は、脳は酸素を求めているのに上手く呼吸も出来ない…
「あぁ、あぁ…」
その時、急に唇に何かが触れる感触と、口の中に何かが侵入してくるような感覚があった。これは…何？
口に入ってきたそれは、甘ったるい水のようで、私はそれを飲み込んでしまった。
「しょ…うた？」
「ふふっ、大丈夫だよ阿部ちゃん。すぐに楽になるから。」
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さくら(プロフ) - orikacoさん» コメントありがとうございます！温かいお言葉、本当にありがとうございます、励みになっております！これからも亀更新ではございますが楽しんでいただけるよう精進します！ (2023年2月18日 23時) (
レス) id: 1995ada5eb (このIDを非表示/違反報告)
orikaco(プロフ) - お忙しい中、更新ありがとうございます！久しぶりの更新に歓喜しております( ˊᵕˋ*)さくら様のペースで大丈夫なので、これからも頑張って下さいね。気長に楽しみにしています。 (2023年2月8日 21時) (レス) @page20 id: 95f4d7b396 (このIDを非表示/違反報告)
さくら(プロフ) - 鳥本さん» コメントありがとうございます。お礼を伝えるのが大変遅くなってしまい申し訳ありません。温かいお言葉本当にありがとうございます！ (2023年2月8日 21時) (レス) id: 1995ada5eb (このIDを非表示/違反報告)
鳥本 - すごく面白いです (2021年12月5日 19時) (レス) @page16 id: 68c869632c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さくら
| 作成日時：2021年6月12日 18時
