61ab side ページ17
「…翔太」
「阿部ちゃん」
ニコニコと笑いながら俺の元に歩み寄ってくる翔太。その笑顔は私の知らない翔大のようで、思わず座ったまま後ずさりした。
「そんな警戒しないでよ。俺と阿部ちゃんの仲じゃんか。」
拗ねたような顔を作るがそれすら怖いと感じてしまう。私はできるだけ冷静を装って翔太に話しかけた。
「…話したいことがあるって言ってたよね。」
「あー、もう本題入る?まあいいや。」
翔太は私の前に腰をおろすと
「ねぇ、この前俺が言ったこと覚えてる?」
「この前?」
「そう。俺と阿部ちゃんが再会した日のこと。」
そう話しながら、どこからか出したのか青い器を2つ目の前に置き、黒い瓢箪のようなものに入っている水を注いだ。
「…あの日のことは、あまり覚えていない。」
「ふーん。まああの時俺力使ったからね。じゃあもう1回言うわ。」
そう言って中身を注いだ青い器を私の前に置き、
「俺らのところにおいでよ。阿部ちゃん。」
「…。」
私はその器を受け取らず翔太を見つめた。翔太は笑ったままだ。
「何も言わないってことは、来てくれるってこと?」
「いや、むしろ逆だ。翔太の仲間になるつもりは無いよ。」
「ふーん、割とキッパリ断るじゃん。」
翔太はニヤリと笑いながら手に持った器の中身を飲み干した。
「翔太こそ…今やってる事をやめた方がいい。」
「なんで?」
「深澤たちがやっている事、正しいと思っているのかい?」
そう聞いたのはまだ翔太が"あちら側"に染まっていないと信じたかったからかもしれない。
「阿部ちゃんは俺達がやろうとしてる事、間違っていると言いたいの?」
「…少なくとも、関係の無い人たちまで巻き込むのは違う。翔太や深澤たちがやっているのは…殺戮だ。」
「関係ない…ねぇ。」
私の言葉に翔太の目つきがかわった。
「異能を持たないやつらは信用ならない。俺たちが何をした?好きで異能を持って生まれたわけじゃないのに…ただ異能を持ってるそれだけの理由で殴られ、蹴られ、罵声を浴びせられた…。アイツらは…みんな敵だ。」
そう言う翔太の顔は今まで見た事ないくらい冷ややかだった。
「私もそう思ってたよ…。異能持ちというだけで私たちは普通に生きることが出来なかった。恨んでいない訳ではない。」
自分が受けた仕打ちを思い出しただけで体が震えた。
「なら!」
「けど…」
翔太がなにか続けようとしたが、私は自分の話を続けた。
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さくら(プロフ) - orikacoさん» コメントありがとうございます!温かいお言葉、本当にありがとうございます、励みになっております!これからも亀更新ではございますが楽しんでいただけるよう精進します! (2023年2月18日 23時) (レス) id: 1995ada5eb (このIDを非表示/違反報告)
orikaco(プロフ) - お忙しい中、更新ありがとうございます!久しぶりの更新に歓喜しております( ˊᵕˋ*)さくら様のペースで大丈夫なので、これからも頑張って下さいね。気長に楽しみにしています。 (2023年2月8日 21時) (レス) @page20 id: 95f4d7b396 (このIDを非表示/違反報告)
さくら(プロフ) - 鳥本さん» コメントありがとうございます。お礼を伝えるのが大変遅くなってしまい申し訳ありません。温かいお言葉本当にありがとうございます! (2023年2月8日 21時) (レス) id: 1995ada5eb (このIDを非表示/違反報告)
鳥本 - すごく面白いです (2021年12月5日 19時) (レス) @page16 id: 68c869632c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さくら | 作成日時:2021年6月12日 18時