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その夜、僕はどうも眠れなくなっていた。康二くんが僕を心配して隣に布団を敷いて寝てくれてるけど…今日はどうも目が冴えてしまっていた。
「…。」
康二くんを起こさないように布団から抜け出し窓から外を眺めた。
「…。」
ダテさんたちの話は思っていた以上に悲しくて…。自分の境遇なんてそれに比べたらまだ可愛いものでは無いかとさえ思えてきた。
一体…僕は何が出来るのだろう…。守ってもらってばっかりで…僕は何が出来るのだろうか…。
「クソっ…。」
一族から受け継いだ木彫りの首飾りを握りしめた時、ふと頭の中に疑問が生じた。
(一族は、どうしてこれを僕に?)
あの日父や母は僕にこれを託して逃がした。一族みんなも逃げろと行った。僕を逃がすことに必死だった。けれど…なんで僕?
僕は異能を持ってないし、運動神経がずば抜けていいわけではない。身長だけは恵まれてて高いし、生まれながらのこの髪色は隠密には到底不向き…。
考えれば考えるほど、この首飾りを守るものに僕が最適だとは思えない。それなのに一族のみんなは、迷わず僕にこれを託した。一体何故?
異能を持っていないから、他の村で差別されずに生きていけると思った?でも僕は異国の血を引いているから差別されていたし…。
「…。」
ダメだ考えれば考えるほど混乱した。頭がパンクしそうだ。
明日はリョウちゃんに薬のこととか教えてもらおうと思ってるし、今は出来ることをしないと…。
「…あれ?」
少しでも眠気を呼び起こそうと布団に戻ろうとした時、薬屋の扉が開く音が聞こえた。
こんな夜遅い時間に誰が…?
今この建物にいるのは家主のリョウちゃん、康二くん、そして僕。康二くんは僕の目の前で眠ってるし…ということは…
「リョウちゃん…?」
僕の考えは当たっていて、フラフラと外を歩いて行くリョウちゃんが目に入った。
どうもその様子がおかしい。何か…引き寄せられているような…自分の意思で本当に歩いて言っているのか怪しい。そんな歩き方だった。
「…どうしよう?」
追いかけようか?けどリョウちゃんにだって何か考えがあって外に出てるのかも知れないし…。じゃないとこの時間にわざわざ出ていく理由も分からないし…。
康二くんを起こそうかとも思ったけど、何が起こってるかもわからない状況でこんな時間に起こしていいのだろうか。
「…。」
考えても答えは出ない。それなら動いた方がいい。
僕は1人でリョウちゃんの後を追いかけた。
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さくら(プロフ) - orikacoさん» コメントありがとうございます!温かいお言葉、本当にありがとうございます、励みになっております!これからも亀更新ではございますが楽しんでいただけるよう精進します! (2023年2月18日 23時) (レス) id: 1995ada5eb (このIDを非表示/違反報告)
orikaco(プロフ) - お忙しい中、更新ありがとうございます!久しぶりの更新に歓喜しております( ˊᵕˋ*)さくら様のペースで大丈夫なので、これからも頑張って下さいね。気長に楽しみにしています。 (2023年2月8日 21時) (レス) @page20 id: 95f4d7b396 (このIDを非表示/違反報告)
さくら(プロフ) - 鳥本さん» コメントありがとうございます。お礼を伝えるのが大変遅くなってしまい申し訳ありません。温かいお言葉本当にありがとうございます! (2023年2月8日 21時) (レス) id: 1995ada5eb (このIDを非表示/違反報告)
鳥本 - すごく面白いです (2021年12月5日 19時) (レス) @page16 id: 68c869632c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さくら | 作成日時:2021年6月12日 18時