第1話 ページ1
「それっていいもの?」
fk「ん?」
ソファに座って煙草を加えた彼に好奇心からそう投げかけた。
「いつも吸ってる」
fk「安心する…かな。まあ一種の精神安定剤みたいなもんだよ。」
薄暗い間接照明の中で、煙草を咥えて物思いに耽けるその横顔が優しくて…
誰のこと考えてるか、わかるよ、当ててあげようか?…なんてね、絶対言わない。
「ねぇ、私にも1本ちょうだい。」
fk「身体に悪いよ。」
「どの口が言ってんの。」
そう言いながら私はベッドから抜け出し彼の隣に座る。
この関係をあなたと続けてどれくらい経っただろうか?
世間では私たちの関係は付き合ってはないけれど…所謂寂しさを紛らわす関係。
深澤辰哉。27歳。
大学生のころからの私の先輩。当時バイトが一緒だったことから仲良くなった。
彼は優しくて綺麗で…。いつも話題の中心にいるような人。みんなを笑顔にしてくれて、頼りになる存在で。女性からも男性からも人気者。
なのに彼女をつくらない。
理由を尋ねたらよくわからないって言ってたっけ…。
「よくわからない…か。」
fk「なにが?」
「あなたが言ったこと。彼女をつくらない理由を聞いたとき。」
fk「あぁ…。そんなこと言ったね。けど本当のことなんだよ。自分でもよくわからない。彼女がほしいってわけじゃないし。」
…だから私がそこにつけ込んだ。付き合わなくていい。あなたが寂しいと思ったときに呼んでくれたらいい。私もよく分からないから…。なんてね。
最初は戸惑った彼だけど。君がしんどくならないなら…なんていいながら彼は私との関係をはじめた。
私は知ってるよ、あなたが無自覚のうちに誰を見ていて、無自覚のうちに気持ちを募らせているのか。
けど、それにあなたが気づいてしまったらこの関係は終わってしまう…。
ずるい私は何も知らないフリをしてあなたに偽りの愛を求めるのだ。
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作者名:さくら | 作成日時:2020年4月7日 23時