その瞬間だけでいい

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康二くんの好きな人は、康二くんより年上の先輩で、見た目はヤンキーだが、弄られキャラで後輩からも慕われている優しい人。

｢ええ人やねん。俺の事信頼してくれてて、俺も1番信頼しとった。周りからは夫婦って言われるくらい仲良かってん…。｣

｢うん…。｣

｢気づいたら好きになっとった。先輩としてとか、仲間としてだけじゃなくて…。｣

そう話す彼の声が少し震えていた。

｢けどな、向こうはそうやなかったんよ…。｣

彼はまた悲しげな表情で話を続けた。

｢向こうは俺が好意持っとること知らんかったんやろうな…。ある日、康二に紹介したい人がおんねんって言われて…。｣

｢…。｣

｢今まで見た中で1番幸せそうな顔して…。
俺この人と結婚するねんって…。｣

｢…。｣

｢まだ誰にも言うてない、1番に康二に知らせたかった！ってあんな幸せそうな顔されたらさ…。おめでとうって言うしかないやん…。｣

そう言って1枚の写真を見せてくれた。

｢これは…？｣

｢その人と、お嫁さん。綺麗に撮れてるやろ？｣

幸せそうに笑う男性と、優しそうな女性が肩を寄せあって微笑んでる写真だった。

｢紹介された日に、撮ってん…。今まで色んな写真撮ったけど…この時、1番いい顔やったな…。見たことない…、俺の知らん…幸せそうな顔してた。｣

そう言って彼は俯き、ため息をついた。

｢俺な、逃げてきてん。辛すぎて…。あの人の近くにおるのが苦しくて…。
それならいっそ知り合いのおらん所まで…って。
アホやんな…。｣

あぁ、そんな悲しい顔で笑わないで…。

｢そんなことないよ…。｣

｢ふふ、めめは優しいな。｣

そう言って彼は俺の頭を撫でた。

｢康二くん…。｣

｢ありがとうって意味やで。聞いてくれてありがとう。ちょっと楽になった！あーっ、酔いも冷めてきた！｣

康二くんはそう言って立ち上がった。

｢康二くん…あのさ…。｣

｢ん、どうしたん？｣

｢もう1枚だけ…写真撮ってくれない？｣

そう言うと、彼は笑顔で

｢ふふ、めめモデルさんハマったん？｣

｢そうかもね…。｣

違うよ…康二くん

俺は、康二くんに笑顔でいてほしい。
そんな悲しい顔してほしくない…。

カメラを向けてるその瞬間だけは、
モデルの…俺の事だけ考えてくれるでしょ？

それで笑顔になれるかわからないけど…
その瞬間だけは、その人のこと忘れて…俺を見て？

あぁ…ようやく自覚した。
あの時のモヤモヤも、君への想いも…。

俺は康二くんが好きなんだ…。

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