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misako side
「でも
それとこれとは別だ」
そうはっきりと
いつになく強い口調だった
驚いた私は
返事をし損ねるが
Aは気にせず続ける
「あのな実彩子
"何かとタイミングが合わないのは
縁がないんだ"とかって
思ってるのかもしれないけどな
タイミングなんていつかは合うものだ
相手は人間なんだから」
暗にお互いに譲歩し合えばいいのだと告げられ
私は何も言えなくなってしまう
ありがとう…でもごめんね
口の中で呟いて
偶然がどうの
縁がどうのというのは
半分は本音で
残り半分はその場しのぎだった
確かにタイミングは重要だと思うが
自分たちの場合は事情が違う
彼は予定が合わないのではなく
合わせたくないのかもしれない
私が仕事を優先してきたように
彼も私より飲み会を選んだのではないだろうか
でもそんなことを口にしたら最後
Aはきっと
苦虫を噛み潰したような顔をして
さっきのように
どうにかいい方向にと
心を砕いてくれるのだろう
「とりあえず週明けにあって
もう一回話し合うことになってる」
余計なことは省いて
端的にそれだけを伝えた
そうか
少しほっとしたように笑って
一眼レフをいじり始める
Aの着てるパーカーのボアが
Aの動きに合わせてふわふわと揺れている
おもむろに顔を上げたAの瞳が
まっすぐに私をとらえた
ぎくりと肩を揺らす私に
Aはくすりとわらって
「だいじょーぶ
大丈夫だ
なんとかなるよ」
またそうやって簡単に言ってくれちゃって
そう思うのに
Aの大丈夫の持つひびきに
こみ上げてくるものがある
黙って頷き
そっと俯いた
まっさらな
強いけど優しいAの視線に
さらされるのが怖かった
，
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作者名：天 | 作成日時：2020年5月30日 17時
