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いつもの席
一眼のディスプレイで
昨日の仕事を確認しつつ
実彩子が試食したベーグルが
正式にメニューになって
ご機嫌で生クリームを山盛りトッピングしたそれに
フォークを伸ばした
ふわりと香るやわらかな甘い香りに
顔を上げれば
にこりと笑った実彩子が
目の前に立っていた
実彩子は
生クリームは頼まず
ベーグルだけにして
指定席になりつつあるというより
もうなってしまった僕の前に座った
「よかったな」
余計なことは言わずに
一言そう言って
お土産という名のお礼をありがたく受け取った
だけど目の前には渋い顔をして
口を開けては閉じ開けては閉じる実彩子
つい
そばに置いておいた
商売道具を取って
シャッターを押していた
唖然としたとおもったら
だんだんと
赤くなってく顔
撮られ慣れてるだろうに
で？
と先を促せば
ふーっと大きく息をついて
ひとこと
「そっちは持ち越しになったの」
パクパクさせてた口をきっと結んで
そう淡々と言葉にした
「もちこし……ね」
なんとなく
最初の反応からして
よくなかったのだろうと
そんなきはしたが
実彩子は
そう
とひとことで済ませる
一応
確認だけしておいた方が
きみにとっても状況整理になるんだろうか
「…えーっと
それはあれか
映画の話題で盛り上がって
普通に話せるようにはなったけど
喧嘩したことについて触れる時間はなかった……とか？」
ひとことで済まされたことに
突っ込んで聞くのはどうかとも思ったけど
まあ一応確認
チケット渡してお節介したのは僕だし
きみは
驚いた
というように軽く目を見開いて
その後すぐに目を伏せた
「……想像力豊かだね
じゃなくて
直前でキャンセルされたの」
「あーもしかして風邪とか？」
「飲み会だって。」
「…………そっか」
，
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作者名：天 | 作成日時：2020年5月30日 17時
