いけないこと (ページ9)

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最悪だ。あんなに良いライブをしたのにこんな空気にしてしまった。二人に悪すぎる。

ﾏﾈ「Aくん?どうしたの?」

壁にもたれかかっていると声をかけてきたのはマネージャーの栞さんだった。
栞さんは本当に優しくて俺らのことを理解してくれて、栞さんは優希とはまた違うタイプの、本当のお母さんみたいで言葉で優しく包み込んでくれる人だ。

「いや、大丈夫だよ。」

ﾏﾈ「うそ。」

え？

ﾏﾈ「そんな暗い顔しながら大丈夫だなんて言っても説得力ないわよ。」

「ごめん…すごいね、栞さんは。」

ﾏﾈ「当たり前じゃないの!貴方達の成長を見てきたんだから」

本当にお母さんみたいだ

「俺だって出来ることなら結成日でも何でもない日のライブでもトークしたい。こんなに顔を隠してバレないように生きるなんてことしたくない…!
でも、…怖いんだよ。前の事務所みたいになりたくない」

少し過去の話をしよう。

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俺らがまだバンドを始めたての頃。

優しそうな女社長の事務所に拾われた。

始めたてでメジャーデビューできると浮かれていた俺達はただライブまでに曲を完璧に仕上げて、ポスターの写真を撮って、また練習してライブを待った。

しかし、できたポスターを見ればそこには

『期待の新人アイドルバンド』

そう書かれていた。

流石におかしいと思い社長に訴えに行った。

すると
「あんた達の歌だけで売れるわけ無いでしょ?顔で売っていかないと、この世の中普通のバンドなんて腐るほどいるのよ。なんでもはいはい言って言う事聞いてりゃいいのよ」

そう言われた。

ライブでもメンバーカラーで分けられたグッズを持った女の子。

みんなバンドのライブではありえない靴、スカート。

絶望だった。

アイドルが悪いとは言わない。
けど俺達のライブはこれじゃない。

俺達は事務所を辞めて、当時のバンド名、3人で初めて作った曲、思い出、全ての過去を捨てた。

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ﾏﾈ「わかっているわ…。でも信じてほしいの、私達は貴方達にもっと世界的に有名になってほしい、これ以上を目指してほしい、私達は裏切らない。本当に貴方達の曲が好きだから。でも、顔を出さなければ肩身が狭いわ。音楽番組にも出れないからまだ知らない人もいるかもしれない。そんな人たちに貴方達の曲を届けたい。未来を見て。少し考えてみない?」

大好きなマネージャーに言われたらそんなの…。
本当に俺は単純だ。

「わかったよ」