そのボディガード、救われる ページ13
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「えっ、お前結婚したの」
「んだよ、その意外そうな顔は」
「いや、意外でしかないだろ? あの禪院甚爾が? 結婚?」
どこかの居酒屋。
結局、有栖川は五条少年に遅れるという旨を電話で伝え、悪友である禪院甚爾と少しだけ飲むことにした。
無論、酒は__飲む。
この後仕事があろうがなんだろうが、飲む。有栖川とはそういう男だった。
「甚爾が…結婚…。プロのヒモが…」
「文句でもあんのか? あァ?」
あまりにも驚く有栖川に、甚爾は不機嫌そうに酒を煽った。
いや、そうじゃなくて、と有栖川は首を振る。
「お前に、誰かの人生に責任を持とうって思わすその人がすげえなって」
「……」
「結婚するとなれば、当然子供も作るだろ。お前、禪院家のこと憎んでるじゃねぇか。その血を遺すことになるのに、お前は選んだんだろ?」
ーーその女性と一緒になることを。
それが、俺は純粋に驚いた。
有栖川はビールを煽ぐ。
甚爾はそんな有栖川を見つめた。
「…甚爾、お前は俺と同類だ」
「ああ、そうだな」
「ーーありがとな」
「あ?」
有栖川のその言葉に、甚爾は首を傾げた。
有栖川は言葉を続ける。
「救われたわ、俺。お前に大切な奴が出来たことで、俺も救われた」
「…有栖川、」
「ーーお前に出来たなら、俺もいつか出来るかもしれねえよな」
有栖川は小さく笑う。
「…てめえにはもうとっくに居んだろ」
「妹や幼馴染はまた違うだろ。そういうんじゃない、大切な奴だ」
「そういうもんかね」
「そういうもんだよ」
さて、そろそろ行かねえと主人がうるさい。
有栖川は立ち上がる。
金は?と甚爾が聞けば、幸せいっぱいの奴が払えよと軽口を叩く。
「子供、産まれたら俺にも会わせてくれよ」
「覚えてたらな」
「うわ、ひっでー。有栖川家の情報網駆使して出産日に会いに行ってやるわ」
「てめえならやりかねないからやめろ」
じゃあまた、次会う日まで。
その日がもう、永遠に来ないことを、2人はまだ知らなかった。
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紅葉(プロフ) - お兄さんの方から飛んできました! 展開にワクワク……とうじさんのこの後の展開にぴえん……多くの感情う渦巻きつつ読んでおります笑笑! 無理なさらぬ程度に更新頑張ってください! 続き楽しみにしています! (2021年3月20日 22時) (レス) id: 7ac5223945 (このIDを非表示/違反報告)
shinox2(プロフ) - 五条少年が苦労するとか面白すぎwwwホントなら反面教師になるんだろうけど、恐らく彼を見て育ったから将来クズになるのかと想像してしまいます(笑) (2021年3月14日 22時) (レス) id: 947326f28f (このIDを非表示/違反報告)
あ(プロフ) - 好きです(絶命) (2021年3月14日 21時) (レス) id: 824a9496d4 (このIDを非表示/違反報告)
ミミ - 入さん» 本当ですか!!! (2021年3月14日 19時) (レス) id: f539e89f92 (このIDを非表示/違反報告)
入(プロフ) - めちゃくちゃ好みの話です!!!!!!!!!!!!!!!!! (2021年3月14日 16時) (レス) id: 6c29c74858 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雨ノ | 作者ホームページ:
作成日時:2021年3月14日 9時