泣かない彼女side夏油 ページ3
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周りの保護者たちに不審そうな目で見られながら、スタンプラリーの台紙と地図を貰う。
「いくぞ、げとう」
「はいはい」
ふんすっとやる気満々に鼻を鳴らしながら、Aちゃんは勢いよく足を踏み出し、そして転んだ。
……笑ってはいけないぞ、傑。
ズテンッと見事に転んだ少女に、笑いを堪えながら、大丈夫?と声をかけた。
泣いてしまうだろうかと心配していたが、杞憂だったらしい。
「なんのこれしき…! これしきのことであゆみはとめぬッ…!」
「本当に自分に厳しいよね。五歳児の言うことじゃないよ」
クッ…!と唇噛み締め立ち上がるAちゃん。
だけど、その足からは血が出ていた。
「血が出てる。…どこかで手当しないと_」
「きづかいむよう。これしきのこと…」
「ダメだよ。バイ菌が入ってしまう。せめて傷口を洗わないと」
「…しょうちした」
少しきつく言い過ぎたかもしれない。
だけど、彼女はやはり泣くこともせず、力強く頷いた。
Aちゃんの手を引き、膝を洗い持っていた絆創膏を貼る。
かたじけないとお礼を聞いて、スタンプラリーに戻った。
「これでさいごのひとつ!」
「頑張ったね」
時折アドバイスをしながらも、Aちゃんはほとんど自力でスタンプラリーの場所を回った。
最後のひとつ、いよいよ景品まで後少しのところだった。
ぎゃんっと子供の泣き声が耳を刺す。
「仕方ないでしょ! あんたが無くしちゃったんだから!」
「やぁああだ!! やーーーーだーーー!!」
「また貰うにももう時間がないのよ!」
どうやら、スタンプラリーの台紙を無くしてしまったらしい。
泣き叫ぶ子供と、そんな子供を叱り付ける母親。
可哀想だが、仕方の無いことだよな…と思っていると、Aちゃんが突然その親子の元へ歩き始めた。
「Aちゃん?」
「…これ、あげる」
「…え?」
スタンプラリーの台紙を差し出した彼女を、子供も母親も驚いたように見た。
「あげる」
「いいの?」
「お嬢ちゃん、大丈夫よ?」
「ううん、いいの」
はい、とAちゃんは半ば押し付けるように台紙を渡し、戻ってきた。
「…良いのかい?」
「Aたちはじかんもあるし、またとりにいけばいい」
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る一 - みたここあるような...。 (2021年6月24日 16時) (レス) id: e0197ab4b0 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉 - じっちゃんが凄く好きですwwwwwwww (2021年5月3日 11時) (レス) id: 4fbbe91aff (このIDを非表示/違反報告)
薊(プロフ) - 続編は無いんですか?!あとこの二人の絵を描いていいですか? (2021年3月29日 6時) (レス) id: 1eff028778 (このIDを非表示/違反報告)
七夏(プロフ) - とてもおもしろいです!続きを楽しみに待ってます! (2021年3月27日 15時) (レス) id: 716685a2fc (このIDを非表示/違反報告)
ゆずポン - じっちゃんwwwwwwwww (2021年3月23日 19時) (レス) id: d6e44b6c46 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雨ノ | 作者ホームページ:
作成日時:2021年3月20日 0時