私の帰る場所6 ページ15
目を開けると、そこは暗闇だった。
「っ！？」
助かったと思ったのに、どうして。あれは私が見たリアルな夢だったってこと…？
私はとっさに起き上がるとそのままの勢いで床に転がり落ちる。ガシャン、と大きな音を立てて、私の隣に立っていたものが倒れた。
「はぁ、は、はぁ…えっ……」
「A！」
勢いよくスライドした扉の向こう、暗がりの中に尚が立っていた。
点滴台を倒して、床に座り込む私を見て、すぐに駆け寄ってくる。
「何してるんだ、危ないだろ。まだ動いたら駄目だ」
「はあ、っ、あ、……っ、う」
ずきずきと身体のあちこちが痛んで、ようやくここが現実であることに気づいた。
尚は私の身体を持ち上げてベッドに転がすと、包帯が巻かれた頭部や、外れた点滴針の跡を見てくれる。
喘ぐような呼吸を続けていると、尚の片手が私の片手と繋がった。ゆっくりと握られて、そこから与えられる安心感に、少しずつ心が落ち着いていく。
「……目が覚めたら、暗かったから、まだあそこにいるんじゃないかと思ったの……」
「Aのことはみんなが助けてくれた。もうAは病院にいるんだよ」
「尚がオペしてくれたの…？」
「そうだよ。今のAは俺の患者」
「そっ、か…」
やっぱり尚が助けてくれたんだ。その事実を知って、強張っていた身体からふっと力が抜ける。すぐ近くにあった死が、遠ざかっていく。
「Aが無事でよかった。生きた心地がしなかったよ」
「私も、死んじゃう…かと思った。まだまだ尚といたいのに」
繋がれたままの手に力を込める。尚もそれに応えるように返してくれて、空いた手で私の髪を撫でてくれた。
「助けてくれて、ありがとう尚」
「Aが諦めないでいてくれたおかげ。俺のところへ帰ってきてくれて、ありがとう」
尚が繋いだ私の手を持ち上げると、その手を額につける。いつもはきちんと整えてある髪がほんの少し乱れていることに気づいて、尚も一杯一杯だったことを知った。
諦めないのなんて、当然だ。尚がいる場所が、私の帰る場所なんだから。
***
橘さん、リクエストありがとうございました！
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 560人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
みずたま(プロフ) - りゅうかさん» コメントありがとうございます。月島さんたちに助けられるお話ってどんな感じになるんだろう…って考えてました。音羽先生が出る幕あるのかな…考えてみます！ (2021年9月23日 9時) (
レス) id: f07c1a6963 (このIDを非表示/違反報告)
みずたま(プロフ) - すずもりさん» レス遅くなりましてすみません！なかなか難しい月島さんとの絡みですが、月島さんも自分の信念を持ってお仕事しているところが書けたらなあと思って書きました。お読みいただきありがとうございました！ (2021年9月23日 9時) (レス) id: f07c1a6963 (このIDを非表示/違反報告)
りゅうか - 初コメ(？)失礼します🙌🙌夢主ちゃんが月島刑事達に助けられる話を読んでみたいです、、！急なリクエストすみません🙇♀️陰ながら応援させていただいてます！ (2021年9月21日 23時) (レス) id: 245bf84ae7 (このIDを非表示/違反報告)
すずもり(プロフ) - みずたまさん!!リクエストに答えてくれてありがとうございました!!月島さんの人間味っていうのかな？←語彙力なくてすみません(笑)国民を大事におもってるシーンがみれてよかったです!!あらためてありがとうございました♪ (2021年9月18日 19時) (レス) id: 850617dc48 (このIDを非表示/違反報告)
みずたま(プロフ) - かかしさん» 初めまして！コメントありがとうございます。私も音羽先生大好きなのできゅんきゅんしてもらえるのとっても嬉しいですー！これからもお読みいただけると嬉しいです！ (2021年9月18日 18時) (レス) id: 38cf2160fe (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：みずたま | 作成日時：2021年9月16日 11時
