You are my home #1【音羽尚】 (ページ10)

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オペは無事に終わったらしい。ERカーの中に先程の隊員が入っていく。
犯人から娘の様子がおかしいと怒鳴る声も聞こえてきていた。
この異常な状況に周囲は人だかりが増えていて、中継している様子も伺えた。
私のスマホが鳴る。画面を見ると、報道部長だった。

「A、お前立てこもりの現場にいるんだろ。電話でもいい。中継してくれないか」
「…犯人に動きはありません。小さな女の子が人質になっています。今のところ死亡者はありませんが、これを放送することによって犯人に刺激を与えてしまうかもしれません。中継するのは得策ではないかと」
「そんな甘いこと言って、他の局に視聴者取られるだろうが！」
「MERが一生懸命、命を助けているんです！私がその頑張りを棒に振ることは出来ません！…落ち着き次第、こちらから連絡を入れます」

言ってしまった。電話を切ると同時に、私の肩が優しく叩かれる。そこにはERカーから降りてきた喜多見チーフがいた。

「任せてください。全員助けて、Aさんがいい報道を出来るようにしますよ！」
「はい…！」

喜多見チーフの後ろには夏梅さんも一緒に控えて走っていく。一瞬目があった夏梅さんと私は大きく頷いた。
喜多見チーフも夏梅さんも、怪我しませんように。

何度か聞こえる銃撃音のたびに肩が揺れる。
しばらくして、尚がERカーから降りてくる。私を見るとすぐに駆け寄ってきた。

「音羽先生、状況教えてもらえませんか」
「夏梅さんが人質の女の子のところにいます。今からSITが助けに入るので、私たちはそのまま女の子のオペを」
「夏梅さんは無事なんでしょうか」
「今のところはそのはずです。…犯人は相当苛立っているようなので、絶対に近づかないで」
「わかってます」

私が頷くと、尚はまたERカーへと戻っていった。すぐに運び込まれた女の子のオペが始まる。赤く灯ったランプを見て、私はぎゅっと手を握りしめた。