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私がふらりと立ち寄ったのは東京海浜病院。どうしても気になってしまう。報道陣が詰めかけているのは朝のニュースからわかっていた。でも、MERのメンバーに、会えそうであれば一言謝りたくて。
エントランスへと向かっていると、向こう側から涼香さんが歩いてくるのに気づいた。
私が声をかけるよりも涼香さんは先に気づいてくれて、びっくりしたような表情を浮かべたあとに慌ててこちらへやってくる。
「Aさん…！だめですだめです…！向こうにはメディアの人たちもいっぱいいて。Aさんがいるってばれたら囲まれちゃいます！」
「その時はその時と思ってたので大丈夫です」
「大丈夫じゃないです…！Aさん、そんなことしてないのに、お兄ちゃんの仲間だなんて言われてて…ひどい…」
涼香さんはへにゃりと眉を下げる。涼香さんは何も悪くないだろうに。
「涼香さんにも迷惑をかけて、傷つけてしまいました。すみません、私がもっとよりよくMERのことを世間に知らせていれば、こんなバッシングは起きなかったと思うんですが」
「そんなこと…！Aさんは本当のお兄ちゃんの姿をずっと映してくれてました。ネットの声がひどいんです……あっ」
涼香さんが何かを思い出したように声を出した。
「近くの大学で爆発事故が起きたらしくって、そこにお兄ちゃんがいるんです。MERも出動していて、そこに行かないと。渡すものがあるんです」
「近く…っていうと、関東医科大？」
「っ、そうです！」
「場所ならわかります。一緒に行きますよ」
「ありがとうございます！」
MERが出動しているのなら、病院に行く用事はなくなってしまった。
涼香さんを送り届けるために、私は足早に関東医科大へと向かう。
向かいながらツイッターで爆発事故について調べてみると、教室の窓から煙が昇る動画がいくつもアップされていた。
そういったツイートには必ずついている、テレビ局を名乗って取材を依頼するリプライ。
「…自分の足を使えばいいのに」
「えっ？」
「あっ、ごめんなさい。数あるテレビ局ですら自分の目で確認しようとしないんだから、一般の人なんて余計にそうですよね」
調べて出てくるのは、喜多見チーフがその事故の首謀者であるということ。憶測のはずが断言までされていて、真実が捻じ曲げられている。
ヒーロー改めテロリスト、という文面が胸に刺さった。
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作者名：みずたま | 作成日時：2021年9月13日 10時
