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カーテンを閉めたホテルの客室の中、テレビの光が私を照らす。
どのチャンネルでも喜多見チーフや赤塚知事やMERのことで持ちきりだけれど、うちの局には私がたくさん取材をしてきた素材がある。
かっこよかった、面白かった、感動した、と言ってもらえた特集で使われていた映像が、使い回して流される。
感動したのに、嘘だったんだ。
全部がパフォーマンス。
SNSもそんなコメントで溢れていて、MERに所属している皆さんのことを思うと、心苦しい。
メディアに追われてないだろうか。
根も葉もないようなことを言われてないだろうか。
夏梅さんや冬木先生のご家族は大丈夫だろうか。
渦中にいる喜多見チーフは。その妹の涼香さんは。
ピンポン、と呼び鈴が鳴る。そのあとにスマホの画面には、着いたよ、と尚からのメッセージの通知が表示されていた。
ドアを開けると、心配そうな顔をした尚の姿。
その腕を引っ張って部屋の中に入れると、私は先にドアを閉める。
一瞬見えた廊下には、誰もいなかった。
扉に額をつけて、深呼吸をひとつ。さっきは電話で情けなく泣いてしまったけれど、どうにか心は落ち着けたつもりだった。
「…わざわざ来てもらってごめんね」
「いいよ、大したことじゃない」
「尚は、喜多見チーフと涼香さんに会った？大丈夫かな。他のMERのメンバーも、こんなことになっちゃってすごく心配。報道陣も病院の方へ詰めかけてるんだよね。ニュース見てたらずっとそればっかりやってて、もっと放送するべきことなんて世の中にはいっぱいあるのに…」
「A」
「っ！」
「無理に色んなことを考えなくていいから」
今度は尚が私の腕を掴む。
ぺらぺらと回っていた口が止まると、言葉ではない何かがそこから出てきてしまいそうで、私は唇をぎゅっと噛み締める。
尚が先導して、部屋の奥へと入る。つけっぱなしだったテレビからは、まだ私の特集の映像を使ったニュースが流れていて、尚は顔を顰めるとすぐさまそのテレビを消す。
しん、と静かになった部屋で、私は立ち尽くしたままだった。
「着替え、一応持ってきた。適当に持ってきただけだけど」
「…ありがとう」
「晩ごはんは食べた？」
「あ…忘れてた」
「そうだと思った。コンビニで適当に買ってきたから、何か食べて」
「……うん」
尚が持ってきてくれた荷物を机の上にそっと置いた。
手が空いた尚は私の肩に両手を置くと、そのままベッドへ座らせた。尚はそこへしゃがみ込む。
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作者名：みずたま | 作成日時：2021年9月13日 10時
