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机の上に広がっているのは今朝の朝刊と、プリントアウトされたネットニュース。
そのどれもが喜多見チーフがテロと関連してることについて触れてあった。
「MERの密着取材は終わりだ」
「そんな！今だからこそ取材を続けるべきです」
「テロリストかもしれない男がいる組織に密着なんて出来るわけがないだろ。それから、Aはしばらく休んでもらうことになった」
「っ、どうして」
「お前が知らなかったにしろ、世間はうちの局に テロリストにずっと密着していたスタッフがいると思ってる。それがAであることもネット上では拡散されているからな。しばらくは仕事に関わらせるわけにはいかない」
悔しさに唇を噛み締める。
結局私は、喜多見チーフを売ることなんて出来っこなかった。そうして一夜明けた結果、ネットニュースの方にリークがあったらしい。私が密着取材の担当だったことを公には言ってないけれど、こういうものは漏れ出ていくものだ。
タイミングの悪いことに、昨日の中継映像をキャプチャーした画像と共に「AAはテロリスト喜多見の協力者」だなんて文字と一緒に拡散が続いている。
まさかこんなことになるとは思ってもいなくて、自分ごとには思えない。
「……かなりやりたい放題してたしね…」
「……視聴率のためならなんでもするんだな…」
どこからか聞こえる影口に、私は肩に下げた鞄の持ち手を握り締める。
自分の目で見たわけでもないくせに。
MERの人たちの頑張りを。喜多見チーフが抱いていた苦しみを。
ただ、喜多見チーフの過去を知っていた上で、それを報道しなかったのは確かに私の意志だ。
私が知っていたことが局にばれてしまうと、立場はますます危うくなる。
悔しくてたまらないのに。言い返せない、何も。
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作者名：みずたま | 作成日時：2021年9月13日 10時
