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なんとあのERカーに運ばれた負傷者が大使だったという情報は、ニュース速報としてテロップで流してもらった。そしてこの事故における死者はいないことも。
「みなさん、お疲れ様でした」
「Aさんもご苦労様です」
「Aさんの喋ってる声、聞こえマシタ！」
「みなさんの頑張りはしっかりリポートさせて貰ったので！死者ゼロもテロップで出てます」
「それはすごい！」
遠くにいる尚は私を見て、ほんの少し笑ってくれている。
みんな暑いだろうに、汗を浮かべた額のままキラキラとした笑顔を見せてくれた。結果オーライではあったけれど、MERが解散するようなことは免れて、本当によかった。
私は局へと戻ろうとしていると、尚が呼び止めてくる。
「Aさん」
「音羽先生？どうしたんですか？」
呼ばれるがままに近寄ると、尚は声を潜めてきた。
「今日は帰れそうにないから、気にせず先に寝てて」
「あ、了解です」
わざわざ言わなくたっていいのに。私が頷いておくと、尚はさっとERカーへと乗り込んでいった。
その翌日、報道部長からお褒めの言葉を貰えた嬉しさのまま、私は病院の方へと出向いていた。
早歩きでMERの待機場所へと向かっていると、私の進行方向に1人の男の人が立っている。
私ははっと目を見開いた。
「どうも、初めまして。Aさんだったかな？テレビ局にお勤めの」
「あ、はい。報道部のAです」
「久我山、といいます。音羽の上司をやっておりまして」
「…ちょうだいいたします」
私も名刺を取り出すと、久我山局長の名刺を受け取る。会うのは初めてだけれど顔は知っていたし、何より尚とも話をしていたところだ。何を言われるんだろうと、ばれないように身構える。
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作者名：みずたま | 作成日時：2021年9月13日 10時
