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あれからも引き続き追った取材でわかったことがある。あの時運び出されたトラックの運転手は居眠り運転をしていたこと。そんな運転手を助けたMERへの評判は賛否両論となっている。
気持ちはわかるけれど、加害者も被害者もみんな命の価値なんて同じだ。全てを救ったMERはもっと褒められるべきなのに。世間的にはそうではないということが歯痒かった。
おかげさまでMERの初出動の現場をリポートしたあの内容は、それなりに反響があったらしい。だとしたら、もっと上手く伝えられたならよかったんだけれど。
ポケットに入れてあったスマホが震えた。画面を見ると、尚からの着信。
「A？まだ局にいる？」
「ううん、今から帰るところ」
「ならちょうどよかった」
「え？」
尚が言ってる意味はすぐにわかった。私が歩いていたその先には、尚が運転する車が止まっていたからだ。
「迎えに来てくれたの？」
「ちょうど帰りだったからついでに寄っただけ」
私が車に乗り込むと、仕事をしていたらしい尚はパソコンを閉じて後ろの席へと置く。
いつもの仕事用の鞄を持っていないことから考えるに、尚は一度家に帰って、それから迎えに来てくれたんじゃないかと思う。
素直じゃなくても、尚の優しさはよく知ってる。その証拠に、車に乗り込むと同時に、私が大好きな紅茶を差し出してくれた。
「お疲れ。もっと凹んでるかと思った」
「案外大丈夫。ありがとう」
この世論については尚も意識しているだろうから、私にねぎらいの言葉をくれたんだろう。仕事終わりで疲れているだろうに、尚は優しい。
「A、今日現場にいたでしょ」
「…危ないところには行かない。尚の仕事を増やさないようにするから」
「…そもそも、医師だってあんなところに行くべきじゃない」
「おかげで死者はいなかったよ」
「今回はたまたま偶然そうなっただけ。いつもそうなるとは限らない。綺麗事のために、こっちが命懸けになるなんてシャレになんないよ」
「…尚は、国民のことも医師のことも考えてる官僚だもんね」
「は？」
「だって、もしこれが認可されて全国に普及したら、それだけ危ないことに合う医師が増えるでしょ。それを心配してるんじゃないの？」
「医師としても官僚としても最善を考える尚、私好きだなあ」
尚が素直じゃないぶん、私が素直に思っていることをなんでも言う。そうやって一緒にやってきた。
尚の横顔がほんのちょっぴり嬉しそうにしていたので、私は満足だ。
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作者名：みずたま | 作成日時：2021年9月13日 10時
