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今日はもし出動があれば、危機管理対策室を撮らせてもらえることになっていた。
出動内容は病院での停電による電源喪失。小規模病院とはいえ、もし生命維持装置が一斉に落ちてしまったら…と思うと、おそろしい。
MERの出動と同時に、私は危機管理対策室へと車を走らせる。現地で他の取材スタッフと合流することになっていた。
正直、尚とあんな風に話したあとだったのもあって、別行動でよかったとほっとする。
インカムから聞こえる災害の状況も頭に入れていると、尚の声が聞こえてきた。
「冬木先生、徳丸くんも聞こえますか？」
「ええ、どうしました？」
「Aさんは？」
「はい…？聞こえています」
「メンバーだけの通話で確認しておきたいことがあります」
「えっ…」
それは私も聞いていていい内容なんだろうか。慌てて喜多見チーフのあとに割って入る。
「Aですが、インカムしばらく外していましょうか」
「…いえ、Aさんも聞いてもらって結構です」
「…っ、はい」
「…喜多見チーフはテロ組織と何か関係があるのではありませんか？」
しん、と一瞬静かになる。夏梅さんと比奈先生、ミンさんが冗談とでもいうように笑うけれど、私は尚がそれを疑っていることはもうわかっている。
涼香さんからはわからなかったから、真正面から聞き出すつもりなんだ。
「一年前。喜多見チーフが海外での医療活動を辞めてからニューヨークに戻るまで空白の期間があります。その間何をしていたのか調べました。しかし所属していた国際医療機関、アメリカの病院など様々な人に話を聞きましたが、誰も答えてくれません。…あなたは何らかのテロに加担し、その期間逮捕されていたのではありませんか？」
ごくりと唾を飲む。
他のメンバーはあり得ないと言うけれど、私が報道に携わっているからこそわかる。尚は徹底的に調べたはずだ。ここまで調べて出てこないというのは、やっぱりおかしい。
口々に喜多見チーフに返答を求めるように言うメンバーに対しても、静かに黙ったままだった。
私は口を挟むことなく、この会話の内容を頭の中に記録させることだけに集中する。
「…これから出動って時に、もういいじゃないですか音羽先生」
「だからこそ聞いているんです。私たちは危険な現場で、互いの命を預けるような場面を何度も経験してきました。なのに喜多見チーフが我々に隠し事をしていたのならば看過できません。そんな人に我々の命を預けるわけにはいきません」
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作者名：みずたま | 作成日時：2021年9月13日 10時
