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尚が帰ってきたのは丑三つ時だった。
玄関のドアが開いたのに反応して私がすぐさま出てきたから、尚は少し驚いたみたいだった。
「おかえり」
「ただいま。待ってなくてもよかったのに。明日もあるだろ？」
まだ靴も脱いでない尚の身体に抱きつく。
温かい身体。生きている命。尚の匂い。
それを全身で感じると、ようやく一息つけたような気持ちになれた。
「…何時でも待ってるって言った」
「ごめん、ありがとう」
シャワーを浴びて着替えた尚と、リビングのソファで向き合う。
今日の出動の内容を聞こうと思ったけれど、どうやらやはりそう簡単には教えてもらえるものじゃないらしい。
「MERのメンバーには箝口令が敷かれた。誓約書も書いたし、誰に聞いたって教えないよ」
「爆発事故があったって報道部の同僚から聞いたけど」
「爆発事故があったのは事実」
じゃあ隠したい部分はそこではないということ？例えば、それが故意に起こされたもので、その原因が国民には知られてはいけないものだった…とか。
考え込んでいる私の額を、尚は軽く叩く。
「いたっ」
「だから、この件に深入りするなって」
「推測するのは自由だよ」
「そこから調査でもされたらたまったもんじゃない」
尚は私が入れたお茶を飲み干すと、そのコップを持ってシンクへと持っていった。その足でリビングの照明を消して、暗闇の中私の手を取り寝室へと連れて行く。
今日はもう寝るぞの合図。
「…Aは喜多見チーフのこと、どう思う？」
「どうって？いい人だなあとは思ってるけど」
暗がりの中、唐突に投げられた疑問の真意はわからない。思ったままの感想を述べても、尚は何も返してこなかった。
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作者名：みずたま | 作成日時：2021年9月13日 10時
