You are my home #1【音羽尚】 (ページ13)

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「すみません、わざわざ空けていただいて」
「いいんですよ。放っておいたら喜多見チーフの家になるだけなんですから」

MERの待機場所の一角に私たち専用の作業スペースを作ってもらえた。申し訳ないと思いつつも、機材の充電スペースであったり、ちょっとした編集作業が出来る場所があるのはありがたいことで、私は夏梅さんに頭を下げる。

「あ、見ましたよ！こないだニュースレターでやってたAさんの特集」
「あ！俺も俺も！ERカー運転してるところ映っててちょー嬉しかったっす！」
「ママが映ってる！って、娘もすっごく喜んでて」
「本当ですか？嬉しいです」
「Aさんが上手く報道してくださるおかげで、MERの評判もうなぎ登りですね」
「まさか。皆さんの頑張りがあってこそですよ。私は事実を報道しているだけです」

夏梅さんや徳丸くん、冬木先生が言っているのは、つい先日の私が担当しているニュース内の特集で放送させてもらったものだ。立てこもり事件でのMERやSITの活躍をまとめたものになる。
実際視聴者の評判も良くて、おかげで報道部長に楯突いたのもお咎めなしになっている。第二弾はまだかと、せっつかれているほどなのだ。
密着取材をさせてもらっているおかげで、ありがたいことに素材は山ほどある。それをどう扱うかは私次第なところで、せっかく空けていただいた場所で作業中だった。

MERの皆さんの話の内容は、心臓移植を控える汐里ちゃんの話に移っていた。非常に優秀な高輪先生が担当されるとのことで、本当だったらそっちの取材もしたいところだ。今回はMERに密着しているから、難しいのだけれど。

「おー！ちょいちょいちょいっ」
「どうしたんですか？」
「いや…超詳しい」

突然大きな声を出した喜多見チーフは尚の腕を掴んで、何かをこそこそ話している。
一匹狼のように振る舞っていることが多い尚だけれど、少しずつここに馴染みつつあるのかもしれない。尚に仲間が出来るのは、私も嬉しい。

そんなMERの穏やかな日常を割いたのは、緊急アラーム。
喜多見チーフの返答を聞きながら私たちも出る準備を始めた。