燃えるフィルム ページ25
.........見えない。
いつもなら真っ暗な中でも扉や光、門なんかが光って見えるのに。
理由は分かる。....私の後ろから伸ばされた手が、私の目を覆っているのだ。しかも手も引かれて。
普通なら逃げ出す所だけど、案の定私はこの人から離れると頼りにできる人が恐らく二人、居なくなってしまう。
だから仕方なく、目を覆われたまま、手を引かれるまま歩いているのである。
体感的に五分程歩いた所で、ぱっと視界が明るくなった。
手が外された。私の手を引いていた手も、私の視界を覆っていた手も、だ。
その時気づいた。
私の手を引いていたのは、しなやかな女の人の手。
私の目を覆っていたのは、ごつごつして、でも暖かい男の人の手。
_______私の知っている人だ!
はっとして振り返ろうとすると、白い布が頬に当たって、後ろから私を包み込んだ。
「駄目だ、振り返るな。....俺とはさよならだ。できるな?A。」
まるで幼児に向けるような言葉。
でもそれはからかいとかじゃなくて、純粋な心配とか、慈愛とかから出る声。
私はこの声の主を、知ってる。
『絋、太。』
「絋太だけじゃない。私だって居るわ。大丈夫よ、後の事は私に任せて。貴女は次の世界へ行きなさい。」
そうやって苦笑しながら言う声も、私は。
『舞、ちゃん....』
「さ、もう時間が無い。早く行くんだ。俺ももうここにはいられない」
「その大きな扉をノックして。」
そう急かされるままに、私は目の前の巨大な扉をノックする。
『じゃあね、二人共。....またね。』
「またいつか....な、A。」
「ええ、またね。.........さようなら。」
「待ってたんだよ、A。ほら、来て。」
優しくて甘い声が扉の向こうから聞こえた。
まだ私は、旅を続けなきゃいけないみたいだ。
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春風 - うおおおあっありがとうございます〜〜〜〜!!返信遅れに遅れすみません、今後も見てください....! (2019年3月29日 19時) (レス) id: 42214bfb42 (このIDを非表示/違反報告)
リン - 凄く...好きです...(語彙力なくてすみません) (2019年1月14日 1時) (レス) id: 9a17a210bc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:春風 | 作成日時:2018年11月7日 19時