9 ページ9
あんたも彼女に振られないようにね?あ、まだ彼女じゃないんだっけ?とねーちゃんはふざけたように口にするとミロを抱きかかえてから「じゃーね」と俺に手を振った。その足で実家に車を返しに行くと、途端にスマホが鳴って確認するとAからのメッセージだった。
美「(笑)」
A:みゅうさん、今日帰ってくる?
バイトから帰ってきたであろう時間。みんなもう家に居ないんだろうな。絶対寂しがってるわ、と思いながら口角を上げて「いま帰ってるよ」とメッセージを飛ばすと「待ってるね」と返ってきた。
そっか、今夜は二人きりなのか。
美「・・・、」
・・・なに、しよう。
あの家で二人きりにされるタイミングなんてほとんど無くて、久しぶりに思いっきり二人きりになると思うと、どこかソワソワしてしまう。やばいな。
ソワソワしながら家に帰ると美味しそうな匂いが漂うキッチンにその姿はなくてリビングを覗き込むと難しい顔をして本に夢中になっている彼女の姿があった。ふふ、眉間に皺寄せちゃって。
ただいま、と俺が声を掛ければハッとして本から視線を上げ難しい顔をしたまま見つめてくるから、「どうしたの(笑)」と笑うと「あ、みゅうさん・・・おかえり」って彼女は目尻を下げてふわっと笑う。
難しい顔をしていたことを指摘すると彼女は頷いて、「お腹空いた」と眉を下げるからその顔がすごく可愛くてその顔を見下ろして「着替えてくるね」と言うと彼女は嬉しそうに微笑んだ。
着替えてからさっきまで上着のポッケに入ってたパセリをAの部屋のドアノブに引っ掛けて俺は一つ笑みを零すと下で待つ彼女の元に向かった。何も言わず隣に座ると、「二人の時は隣に座るようになったよね」と俺を見つめるから素直に「うん、近くにいたいし」と返せば彼女の顔が嬉しそうに緩んだ。
隣で食事するのが、恋人のそれっぽくてこういう時間が好きだったりする。まぁ、まだ恋人じゃないんだけど。Aがいつか言った「恋人になる練習」的な感じでくすぐったくて、幸せで、楽しい。
食べ終わったのちに、「何しよっか?」と顔を向けてくるAに前のように「映画でも見る?」と問いかけたら彼女は頷いてから「お風呂は入ってからね」と微笑んで自分の部屋の扉に目を向けて、黄色いそれに気づいてハッとした様子で俺に目を向けた。
1827人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:愛美 | 作成日時:2020年9月20日 2時