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いま、何が起こってるの。
わたしが好きで、
でも諦めなきゃいけないと思ってた人に
抱きしめられて、好きだと言われてる。
振られるつもりしかなかったから、なおさら分からない。
細いと思ってたのに、やっぱり男の人なんだなと思わせる温もりとか
耳のすぐ近くで感じる亮くんの呼吸とか
ドキドキしてるけど、どこか心地よくて
突き放せない。
「ぁ、の、…りょうくん、」
でも、もうこれ以上は
心臓が破裂してしまいそうで、亮くんの胸をとんとんってしてみる。
「報道、見られちゃったよな。」
どきん。
そうだよ、きれいな女優さんと。
夢みたいなことが次々起こるから、忘れかけてた。
「もう、…会えないと思って、」
「それで電話も出てくれなかったの?」
「…ごめん、」
ふぅ、と息を吐く亮くん。
だって、会ったら好きが溢れそうだったんだもん。
こうするしか、方法が分からなかったから。
「あれ、嘘だから」
「へ、…」
うそ。
その言葉が飲み込めない。
「俳優仲間で飲んでて、もっと人いたし。あの人とは前から同じマンションで、帰りも一緒になっただけだから。」
固くなってしまった心が、ほこほこと解れていく。
「Aにすぐ伝えたくてずっと電話してんのに、全然出ねぇし。会いに来てみたら、知らない男に抱きしめられてるし。」
なにお前、むかつく。って
ほっぺをむにゅっと摘まれる。
むかつくって、こっちの台詞だよ。
あなたのせいで、どれだけわたし、振り回されたと思ってるの。
「…でも、もういいや」
「ん?」
やっと、言える。あなたにずっと、
伝えたかったこと。
ずっと大切に、しまってあったこと。
今度こそ。
「わたしも、亮くんが好きです」
その言葉で、亮くんが嬉しそうに笑うから
また一つ、好きが積もった。
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作者名:憂 | 作成日時:2018年12月9日 23時