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夜とは言え、芸能人だし、目立つといけないと思って
仕方ないもんね、なんて誰に対してか分からない言い訳をしながら
亮くんとふたり、部屋に入る。
会うのはいつも外だったから、家は、これが初めて。
「、適当に座ってね。コーヒーいれる。」
雨で濡れてると思って、タオルを渡す。
「ぁ、うん。ありがと。」
わたしの部屋で、ふたりきりで、
意識しないはずがない。
そんな気持ちを搔き消すように、ぱたぱた動く。
「ミルクとお砂糖、」
振り返らずにいると、
「もう、いいから。…こっち見てよ。」
ふわっと、頭にタオルがかけられて
わしゃわしゃって少し不器用に拭いてくれる。
距離の近さに、タオル越しの亮くんの温かさに、
心臓がどくどくして
普通でいられなくて。苦しい。
「っ、もう、っやだ、」
ずっと我慢していた気持ちが、一気に溢れ出す。
「優しくなんて、しないで、っ」
あなたにとっての私が、何でもないなら
もうこれ以上、あなただけしか考えられないようにしないで。
これが最後だと思って、振り返ると。
ああ、亮くんだ。
わたしが、恋をした人だ。
「、…わたし、っずっと、」
会えなくなったとしても、きっとすぐには変えられないけど
「ほんとは、ずっと、っ」
伝えることくらい、許してね。
「…亮くんのこと、す…っ、」
すき。
伝えたかった言葉が、途切れる。
どうしてって、
「俺…、」
亮くんが
「Aが好きだよ。」
わたしを抱きしめて、
「大好きだよ。」
わたしが一番欲しかった言葉を、くれたから。
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作者名:憂 | 作成日時:2018年12月9日 23時