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「ねえ亮くん、やっぱり車で、」
「Aそればっか。堂々としてたら大丈夫だって」
お買い物はわたし一人でいいって言ってるのに
聞いてくれない亮くん。
メガネをして、帽子も被ってるけど
安心なんて全然できなくて、内心ひやひやしてる。
記憶にうっすら残ってる、亮くんの熱愛報道。
あんなことがまたあったらと思うと
敏感になるのは当然だと思う。
「ほら。あとなに買うの？」
反対に亮くんは
そんなことは気にも留めてないみたいに
買い物かごを待って、反対の手でわたしの手を握る。
きっともう、何を言っても聞いてくれないだろうな。
意外に頑固なのだと、この日知った。
「亮くんこれ、鶏肉じゃなくて豚肉だよ」
「え、うっそ。じゃあこれ？」
「それは牛肉」
「もー分かんねえー」
わたしもあんまり神経質になりすぎてもなと思って
小学生のような間違いをする彼に笑ったり、
手は繋がないと言うと
分かりやすく拗ねてるところが可笑しかったり。
また、小さな思い出が増える。
「亮くん、わたしも持つ」
お会計をしてくれた上に
2つある袋をどちらも持ってくれようとする。
「何言ってんの。持たせるわけないでしょ」
「でも、」
「はいはい、Aはこっちね。」
そう言って
1つにまとめて持つと、空いた手で、またわたしの手を握る。
「車までならいいでしょ？」
温かくて、わたしよりも大きな手。
わたしだって、本当はずっと繋いでいたい。
「我慢。しすぎるなって言ったろ。」
その気持ちを、優しく汲み取ってくれる。
いつもそう。
不安な気持ちを受けとめて、包み込んでくれる彼に
助けてもらってばかりだから
「…ありがと。」
わたしの好きの気持ちが、少しでも伝わるように
愛おしい彼の手を、握り返した。
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作者名：憂 | 作成日時：2018年12月9日 23時
