■恋愛事情…110 ページ10
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「バーカ。誰が嫌いになるって言ったよ。」
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聞こえるはずのない声が聞こえて、
私は急いで立ち上がり向こうの窓を見つめた。
閉ざされていた俺様先輩の部屋は
カーテンが開いていて、
その本人は頬杖をついてこちらを見ている。
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あ「大貴先輩!」
大貴「そんな大声出されたら近所迷惑です。」
・
イタズラに笑うのはいつも通りだったけれど
その後に切なそうな顔を見せるのは初めてだ。
・
大貴「嫌いに……なれるわけねぇじゃん。
俺、好きって言ったじゃん。」
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逸らすことなくそう言い放った大貴先輩は
皆が言う通りカッコイイ。
・
大貴「でも、邪魔もしねぇよ?約束する。」
・
にこっと笑いながら小指を差し出して。
同時に、胸がきゅーっと苦しくなった。
・
大貴「俺はAに困ってほしくて
言ったわけじゃないからさ。」
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意地悪ならとことん意地悪してくれればいいのに。
こうやって、たまに優しいところがあるから
嫌いになれなくて、
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だから、ずっと一緒にいた。
・
大貴「まぁ、ただの強がりに聞こえるって
分かって言うけど……宏太はいいやつだよ。」
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私の背中をいつも押してくれて、
俺のことは気にすんなと遠回しに言ってくる。
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あ「私……大貴先輩を傷つけてばっかり。」
・
やっと出てきた言葉はそれで、また涙が溢れだす。
喉の奥が熱い。
本当に見苦しいほどに泣いていた。
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大貴「泣くなって。俺は傍にいるじゃん?」
・
あ「……そう、だけど。遠いんだもん。」
・
いっつも傍にいてくれたのに、
今はベランダのその向こうにいる。
・
大貴「俺だって、傍に行きたいよ?
けど、Aには立派で完璧な王子様がいるでしょ。」
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作者名:おんぷ♪ | 作成日時:2014年1月28日 14時