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自身の正体を見抜かれ、ピンときた。
魔神。彼は七神の一柱だ。あの全てを見通すような黄色い瞳…おそらく最近死んだはずの岩神だろう。
あちらも私が彼の正体に気づいたことを悟り、そっと唇の前に人差し指を添えた。黙っていろ、ということか。
確かに葬儀屋とはいえただの人間である胡桃に自身が神だとバレる訳にはいかないだろう。…いや、彼女ならもう薄々気づいていてもおかしくはないが、どっちにしろ自ら晒すべき情報ではない。
私がそれをバラしたところで何か得られる訳でもないので、一つ頷いて口を閉じる。
急に目で会話を始めた私達を胡桃が訝しんだ目で見てくる。だが彼女はすぐにそれも無かったことにして、いつもの調子で会話を続けた。
「うん、今日からウチで働いてもらうことになったんだけど…人形って?」
客卿が一瞬私について説明しようとして、口を閉じる。
「いや…それについては彼自身に聞いた方がいいだろう」
「ふーん……ねぇねぇ、人形って?」
胡桃は言われるがまま直球で私に同じ質問を投げかけた。
もう客卿には見抜かれているのだし、ここでしらを切ったところで意味はない。そのため、特に躊躇うこともなく事情を話した。
…人間に話したことのない話題について上手く説明するのは存外難しかった。
一通り話し合えると、胡桃は驚きより先に歓喜の表情を浮かべた。
楽しくて仕方がないといった笑顔で手を握られ、上下に勢いよく振られる。
「じゃあ、じゃあ!雷神と同じぐらい濃ゆ〜い雷元素を出せるってこと!?やったよ鍾離さん!今回の葬儀、仕込みは完璧!」
「堂主、そろそろ彼の腕を振るのをやめた方がいい」
あまりに強く振られるので、腕どころか上半身も一緒になって前後に振れる。
頭痛の機能が備わっているこの体には、当然「酔い」の機能も備わっているらしく、気分が悪くなってきた。
私が今まで酔ったことがないのもあるかもしれないが、この動きだけで段々目が回ってくる。若干吐き気もする。
「あっ、そうだよね!生まれてすぐなんだもんね。ちょっと強く振りすぎちゃったかも」
『いや…問題ない……』
「口元抑えながら言われても説得力ないよ」
袋いる?と気遣われたが、丁重に断った。一向に何かが迫り上がってくる感覚がないので、おそらく「吐く」とまではいかないように作られているのだろう。
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△(プロフ) - リクエストに応えたいただき本当にありがとうございます!影ちゃんと主人公の関係性がとても尊く、思わずにやつきながら読んでしまいました🙏これからも楽しみに更新をお待ちしています🙇♀🙇♀ (2022年9月3日 23時) (レス) id: 903d9d5d23 (このIDを非表示/違反報告)
ぼんぼんばくだん - 神子にお姉様付けるのほんとに好きすぎる…!!!最高ゥゥ↑↑!!リクエストなんですが、胡桃と絡ませて欲しいです!!胡桃に振り回される雷幻ちゃんが見たいです!!お願いします!!最高です!!! (2022年8月29日 19時) (レス) @page31 id: 6ea26225bb (このIDを非表示/違反報告)
△(プロフ) - 二度目のコメント失礼します🙏今回のお話も楽しく読ませていただきました!リクエストの件なのですが、雷電影ちゃんとの絡みをもう少し読んでみたいです😌個人的に「神子お姉様」呼びは私にも刺さりました... (2022年8月27日 23時) (レス) id: 903d9d5d23 (このIDを非表示/違反報告)
名無し3680号(プロフ) - 最初から読ませて頂きました!とても面白かったです。リクエストでティナリ君と絡ませて貰う事は出来ますか?こんな面白い小説久しぶりに見ました! (2022年8月27日 23時) (レス) @page31 id: be46167942 (このIDを非表示/違反報告)
爽(プロフ) - いつも拝見させていただいてます!物語もイラストも凄く素敵で、いつの間にか最近の楽しみになっていました!これからも応援しております! (2022年8月24日 3時) (レス) @page19 id: 23f7552425 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:よつばし | 作成日時:2022年8月14日 23時