ゆめまぼろし【原神】

引きこもりの介護 ページ36

「幻夢、お出かけに行きましょう！」


将軍が急に影に変わったかと思えば、いきなりそんなことを言い出した。

目の前には文机。今丁度、向かいに座っている将軍と今後の稲妻の方針について話し合っていたところだった。

驚いて固まっていると、ぽた、と三行ほど計画を書き綴った紙に墨が落ちた。

しまった、筆を置くのを忘れていた。2度目の悲劇を引き起こさないよう、すぐに近くの硯に立てかける。


『その、今は仕事が…』

「将軍とは先程話をつけました。一日ぐらいなら先延ばしにしても支障はない。そうでしょう？」

『そういう事でしたら…』


影は見るからにウキウキしながら立ち上がり、足早に外へと続く廊下へと向かった。

私もその後を追おうと立ち上がったが、よく考えれば準備が必要かもしれない。


まず最初に、影はモラを持っているのだろうか？

答えは恐らく否。影は神であり、飲み食いや睡眠の必要がない。今も人形である将軍の体を依代にしているから、その点は変わらない。

そのため、たとえ外出しようが物を買う事がないのだ。ならばモラは余分な重量を増やすだけのもの。

いざとなれば横に控えている兵士に命じればいい。

そんな将軍の体のまま、なんの準備もせずに外へ出たという事は…

…ふむ、かなり多めにモラを用意しておこう。


そして次に、影は誰か1人にでも外出することを伝えたのだろうか？

答えはこちらも恐らく否。彼女は何故か今気分が最高潮に達している。そんな事を気遣っている余裕はないだろう。

ずっしりと重くなった財布を懐にしまいながら、道すがら警備の者に外出を伝えた。


天守閣を出ると、影は既に二つ先の階段に差し掛かっていた。見失うと何か問題が起きる気がするので、走って後を追った。

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