ゆめまぼろし【原神】

2 ページ28

たったの数時間ですら平蔵の相手に当ててはいけなかったらしい。

あの連日の挿絵制作作業すらここまでのものではなかった、それほどまでの疲労。

機密情報ではない情報は端から端まで全て洗いざらい吐かされ、時には全く生産性のない話も振られた。しかも適当に返事をするとすぐにバレるのだ。

今日はもう帰って久方ぶりの休眠がしたい。強くそう思った。


平蔵は疲労の余りしゃがみ込む私を引っ張って立ち上がらせ、徐に開けた場所へと移動した。そして辺りを見回し、海岸に沿って歩いていく。


「さぁて、そろそろ犯人が罠にかかった頃かな？」

『…まさか、最初から手は打っていると？』

「僕は天才なんだから、そうに決まってるだろう？」


つまり私は居なくてもよかったのか？ではなぜ私は貴重な休暇を平蔵の相手に当てなければいけなかったんだ？

腹いせに視線で平蔵に不満をぶつける。


「勘違いしないでほしいんだけど、これもちゃんと君が居ないといけない作戦だったんだ」

『ほう？では概要を言ってみろ』

「えーっと、そろそろ見えてくると思うんだけどな…あっ、見えてきた！あれだよ、あれ！」


私の問いには答えず、平蔵はズンズンと先に進む。説明するより見せた方が早いということだろうか。

平蔵が指差した方を見ると、動物を捕らえるのに使うような粗末な罠にかかった人間がいた。


『…？なんだあれは？』

「あれが犯人だよ」

『は？』


俄に信じがたい。これまで様々な知略を繰り広げ、城下町を騒がせていた事件の犯人がまさかこんなもので捕まるとは…

それに結局私は罠に関係なかったじゃないか。


『此奴は何故こんな罠で…？』

「実は犯人は君のファンだったんだ」

『は？』


動揺。困惑して犯人の方を見遣ると、目が合った。すると犯人は心底幸せそうな表情で自首すると申し出てきた。

気持ち悪…いや、まずは訳を聞こう。激しく動揺しながらも平蔵に詳しい説明を求めた。

3→←1

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す