第三話「手作りの味」 ページ4
【白崎side】
ようやく首吊りから解放された僕は、このどこか間の抜けた人が悪い人ではないと判断した。
だって助けたのにこんなに態度が悪い僕に怒らないなんて平和ボケが過ぎるじゃないか・・・
「さぁ、遠慮せずに食べてください。食べないと体力がつきませんよ。」
「・・・・おぅ・・・・・・」
おかゆと称された一人用の土鍋の中にあったのは、何を入れたのか紫色や緑色が混ざり合い、真っ黒な焦げがアクセントになった米状の何かだった。
これを食べるのか・・・?と視線を向けると長い前髪の下に期待に満ちたきらきらした目が見える。
「い、いただきます・・・」
意を決して口の中に放り込み租借する。
苦味と塩味が交じり合い、時よりじゃりじゃりとしたそれはお世辞にも美味いとは言えなかった。
決して美味しくはないのだ、なのにこんなにも泣きそうになるのは誰かに僕だけのために作ってもらったのが本当に久しぶりで・・・
情けないことに長年我慢してきた涙を止める方法なんて忘れてしまって、次々とこぼれてくる。
「あなたも頑張ってきたのですね。」
そんなことを言って頭に乗せられた手は大きくて暖かくて、どこか父さんのようだと思った。
「私は四葉幸といいます。君、名前はなんと言うのですか?」
「ぐすっ・・・・・白崎雪です・・・・」
「雪くん、いい名前ですね!もしやあのアパートに入居する予定だったんですか?」
「どうしてそれを?」
「あの前で倒れていましたのでもしやと・・・ふむ、なるほど」
青年の名前は四葉幸さんというらしい。なんとも幸福に愛されたような名前である。
「では一旦家に帰るのですか?」
「あー・・・未定ですね、手持ちも少ないもので・・・・」
「ずいぶんお疲れだったようですがここに来るまではいったいどのように・・?」
「お恥ずかしい話、野宿です・・おかげでこのざまですが、はは・・・」
「・・・・・頭金なし、月2000円、風呂トイレキッチン共用ですが個室の広さは10畳、共用スペースは使用自由のシェアハウスはいかがでしょう?」
「そ、そんな優良物件が!?2000円って本当ですか?もしかしてワケありとか・・・」
「安心してください、居候するようなものなので破格なだけです」
こんな幸運あっていいのか!?嬉しすぎる!
「ぜひ入りたいです!!どこにあるんですか?」
「気に入ってくれたようでよかった。"四ツ葉家"へようこそ、白崎雪くん。」
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作者名:雪弥 | 作成日時:2019年4月8日 21時