鷹の目の心Ⅲ (ページ25)

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ミアは自らに与えられた部屋に戻ると、月夜を眺めた。

(前もこうやって...月を眺めた気がする....)

気配を感じて振り返ると、赤ワインを持った鷹の目....

ハッとすると、たしぎが立っていた。

たしぎ
「どうしました？今日も任務、お疲れ様です」

『ありがとう...』

ミアは騒ぐ心臓を抑えながら、労いの言葉をかけてくれたたしぎに礼を言った。

たしぎ
「今日、麦わらの一味と交戦したんですよね？」

『そうだけど...残念ながら取り逃したよ』

ミアは畳に座った。

たしぎ
「大変でしたね。初任務で麦わらの一味と交戦するなんて...」

『Dr.の研究の成果ってやつ、私で試したいんでしょ？世界政府も海軍も』

たしぎ
「たしかに、あなたの戦闘能力は高いですけど...。」

たしぎは眼鏡をクイと上げながら、ミアを眺めた。

どこか寂しそうな佇まい。
元海賊といえど、歳も近い娘をたしぎは気にかけていた。

たしぎ
「スモーカーさんは、あまり関わらない方が良いって言うんですけど、私は...そうは思えなくて」

『私は、ずっと海軍に居座るつもりはないからね』

ミアは刀を鞘ごと抜き、膝に乗せた。
美しい鞘を眺め、そっと指でなぞる。

たしぎ
「いつか、海賊に戻るということですか？」

『こんなことあなたにいうのはどうかと思うけどね...。どうせ、このままどんどん記憶を抜かれていくなら今のうちに出来る意思表示くらいしたいじゃん...？』

ミアは儚げに笑って見せた。
たしぎも知っていた。
このままミアが、記憶あるままではいられない事を。

それが正義のためだというならば、海兵であるたしぎもその決定には逆らえない。

ましてや、海賊に再び成り下がろうとする者の手を取るようなことは、できなかった。

長い沈黙が続き、たしぎが口を開こうとすると、ミアは座ったままうとうとと眠ってしまっていた。

たしぎは肩から布団をかけてやると、一礼して部屋を後にした。