体温／月 ページ7
▽
生温い人肌を感じていたい。寝返りをうつには狭すぎる距離が丁度よかった。広いベッドにくっつくふたつの人影を、馬鹿だと月は笑うんだろう。
「寒いね」
今年は随分と冷え込む冬だ。彼はぼそりと呟く。
そうだね、私も肯定した。明日からの彼はまた仕事で、暫く家を空けるそう。大丈夫だよ、頑張ってねと決められた台詞を言うまでに時間が少しかかってしまった。「だって、寂しい」。
独り言に終わらせてくれればそれでいい。心の声ならそれだけで、答えなんて求めてないのに。
「君も寂しいなんて思うんだね」
彼の声はこの静寂な空間によく響く。外の風が窓ガラスを揺らし、ガタガタと不安げに音を出している。そんな音に紛れてしまいそう。
「そりゃあ、」
【SS】前だとわかっていても、やっぱり我儘ぐらい言いたくなる。布団の中で温かい彼の足に触れてそう思った。明日私が起きる頃には、彼は隣にいない。
少しの間でもふたりでいたい、そんな結論からふたりで暮らし始めたのに なんだかまだ遠く感じる。伸ばした腕を彼は受け止めてくれた。
「早く帰ってきてね」
「……珍しく素直だね？」
「そういう私は嫌い？」
「そんなことないね！寧ろ少しぐらい僕に行かないでって縋りついてほしかったぐらいだね」
彼がいなくなる前は何もいわない。頑張って、と愛想無い言葉で彼を送り出して後悔した朝、彼はもういない。そんな生活の繰り返しだった。いつも夜遅くても電話をいれてくれるぐらい優しい彼に私はいつも無機質なような態度だったと思っている。
＿＿ 行かないでと言ってもよかったのだろうか。
それが彼の躊躇いになるなら言いたくなかったし、それを言い訳にされるのも怖かった。でも彼も同じく寂しいと行きたくないと離れたくないなんて思ってくれていたのなら、もうちょっとその腕を離さなくてもよかったのかもしれない。でもやっぱり彼には頑張って欲しいから、彼はアイドルだから、それはまだ言わない。
「明日、私も早く起きるね」
「見送ってくれるの？」
「うん」
「本当に早いよ？」
うん、って言ってるじゃん、私は笑う。その扉が閉まる一秒前まで、彼を離したくないだけ。
．
その日の月は、早く降りた。
．
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櫻井かぐら(プロフ) - 果蓮さん» お返事が遅くなり申し訳ございません。とても励みになるお言葉を有難うございます(*¨*)日和くんいいですよね！こちらこそ読んでいただきありがとうございました！ (2018年3月18日 11時) (
レス) id: fdaf4afefc (このIDを非表示/違反報告)
果蓮 - 私、日和君大好きなんです！とても私好みな小説でした！甘い内容でキュンとしてしまいました！素晴らしい小説を読ませていただきありがとうございました！ (2018年2月23日 17時) (レス) id: 6f9ac6c8d1 (このIDを非表示/違反報告)
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