好きを／涙 ページ3
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彼が泣いた姿を私は初めて見た。
いつでもプライドを大切にする彼は決して弱みを晒さなかった。その舞台の上で堂々とした振る舞いで周りを鼓舞する背中は広く逞しい。彼のようになりたいとアイドルを目指していく人も数少なくないだろう。まさに、トップアイドルの名に相応しい。
そんな彼は私の前でも同じ。私が泣いていたらその背中を擦り、何か気晴らしにと笑い飛ばしてくれる。困っていたら手を差し伸べ一緒に歩んでくれる。それが彼、巴日和なはずだった。
いいや、はずだった＿＿とは間違いで。彼はそんな男だ。今まさに舞台を降りるその1秒までファンには一切の気を抜かない。その声は " おめでとう " と優しく若いユニットを祝杯しており、それは心からの言葉だということぐらい誰だってわかる。
初めて敗者としてステージを降りた彼の顔には 不安 も 不満 もないように見えたのだ。
「どっちも素晴らしかったよ」
勿論彼も、とても輝いていた。それ以外の言葉なんて掛けられるはずがない。
「そんなの当たり前だねっ」
無理して取ってつけたような仮面が壊れていく。ねえ、大丈夫、あなたひとりに背負わせようなんて考えてもいないから。彼の両頬を小さな私の手で包む。こんなに汗をかいて、こんなに必死になって、こんなに素敵な人を彼以外に知らない。
「…、Aちゃん？」
「今までで一番素敵なステージだったよ」
何処の誰より、巴日和が。なんて、言わなくても伝わったんだろう。その手から力げなく落ちていくタオルに、彼の双眸の薄い膜が反射して、揺れる。
「＿＿馬鹿だね」
「うん」
「僕は負けたね、負けた、Tricksterにね」
「うん」
「でもね、っ 楽しかった」
その思いを込められた涙がツツ、と伝って私の手に触れる。ジュンくんにも申し訳ないね、と瞳を伏せて言う彼に私は首を振る。そんなこと、ジュンくんも思っているわけないよ。
「お疲れ様、日和」
「……優勝見せてあげられなくてごめんね、Aちゃん」
まだ熱の引かない舞台の裏で、ひっそりを私たちは瞳を腫らした。
．
大好きだよ、日和
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櫻井かぐら(プロフ) - 果蓮さん» お返事が遅くなり申し訳ございません。とても励みになるお言葉を有難うございます(*¨*)日和くんいいですよね！こちらこそ読んでいただきありがとうございました！ (2018年3月18日 11時) (
レス) id: fdaf4afefc (このIDを非表示/違反報告)
果蓮 - 私、日和君大好きなんです！とても私好みな小説でした！甘い内容でキュンとしてしまいました！素晴らしい小説を読ませていただきありがとうございました！ (2018年2月23日 17時) (レス) id: 6f9ac6c8d1 (このIDを非表示/違反報告)
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