神柱って知ってる?

小突く ページ8

「そんな暗い顔しないでよ

　恨んでないって言ってるでしょ」



槍で体を支えるように立っているAは

そういったかと思うと


石突きの方を上げて

獪岳の頭を小突いた



小突くといっても
槍はビリヤードさながらの速さで獪岳の額を突く


槍を持ち上げるスピードは普通だったのに

小突くスピードだけ異様に速い


流石 柱というべきか



流石手合わせ初日にして

弟弟子の頭をぶったたき 丸一日気絶させた女というべきか









手加減諸々が感じられないその突きは

彼女の弟弟子の額に当たったかと思うと

擬音語ではなくリアルに

ゴツッという音を上げた



その様子を見ている者がいたら

「いや お前絶対怨んでるだろ」と突っ込みを入れそうなほど

素晴らしく見事な突きである



その突きを受けた獪岳はさながらスローモーションのように

上半身を後ろにそらした後



前に体をかがませて額を抑えた



あまりの痛さに体が震える

けれど思っている事は




「痛ぇじゃねえか」


ではなく


「やはり 恨んでいるのではないか」


という普段の彼なら絶対に思わないであろうことである






この男 今まで落ち込むことなどなかったから

というか落ち込むような負の感情は怒りへと変換されていたから気づかなかったが


落ち込むときはとことん落ち込むタイプらしい

めんどくさいタイプだ






自分は最低な人間だと思うほど

どす黒い何かに飲み込まれていく




額を抑えていた手はいつの間にか顔全体を覆い

地面を見つめながら自己否定を続ける




いっそのことその槍で俺の事をついてくれないかと

貫いて 俺を殺してはくれないかと


どんどん


どんどん



渦巻いていく

涙→←そういう奴

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す