勝負 ―５― ページ5
なんかバタバタ仕事を片付けてる内に、夕方頃になってふと、気づく。
なんで勝負になってんの。
Aさんはおれのものなのに。
Aさんも俺のものって自覚してるだろうし、俺だってAさんのものなのに。
なんでまだ取り合いみたいになってんの。
「はぁ？」
「ん？」
信号が赤になって、社用車のブレーキを踏む。
横でぼおーっとしてる大野さん。
「ね、ちょっと確認したいんだけど」
「なに？」
「Aさんに降参って言わせるってさ、なんで勝負になったんだっけ？」
「さぁ？」
大野さんも、あれ？って顔をして首を傾げる。
「俺の女も俺の男も奪いやがって！勝負だ！って話だったと思うのよ」
「あーあーあー、そう、うん」
大野さんが自分の顎にちょっと触りながら頷いてる。
「ね、ハッキリ言って、あの人もう負けてるよね？勝負ってなんなの」
「なんとか勝ちたいんだな」
「別に大野さんもAさんも、わたし奪ってないよね？元々あの人のものだったんならともかく」
「うん」
「なんで乗っちゃったんだ、あの勝負」
「ま、勝っても負けても、自分に損しないような勝負に持ち込むの得意だもんね、翔くん」
「……」
「負けて元々、勝てたらラッキー、みたいな勝負。自分に損な勝負は仕掛けないよ」
大野さんが事も無げに言う。
「なんか自分がバカみたいに思えてきた」
「違うよ、翔くんが上手いの。自分の土俵に持っていくのがね。ほら、サッカー勝負とか言ったでしょ」
「……言った……」
「あれね、自分に有利な勝負誘ってズルいぞって言わせて、じゃあこっちでいい？って妥協案に出して相手にうんって言わせるの」
「……」
大野さんが眠そうにふふって笑う。
「わかってたけど面白そうだから乗ってみた」
「そうだ！皆が乗ったから焦ってつい！」
「ふふふ」
「酷いよね？なんでこんなオモチャにされんのよ……」
「多分、羨ましいからだな」
「Aさんの彼氏が羨ましいってこと？」
「違うよ」
「へ？」
大野さんがシートに沈み込んで、目を瞑る。
「寝ないでよ……」
「ついたら、起こして。昨日ニノの分まで残業して眠いから。まさかAといちゃついてたなんて知らなくておれ頑張ってたから」
これ言われたら何も言えない。
「すみません……」
「元気になってホッとした」
これ嫌味かしら。
嫌味だな。
鼻が笑ってるもん。
「ごゆっくりお休みくださいな」
大野さんがふって、笑った。
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あき(プロフ) - はじめまして、あきと言います。軽快な会話のやり取りに引き込まれあっという間に読んでしまいました！これからも素敵なお話をお願いします！楽しみにしてます！ (2015年9月16日 7時) (
レス) id: cc888f66ce (このIDを非表示/違反報告)
。*チョコ*。(プロフ) - はじめまして！このシリーズ、読みながら笑っちゃう部分があったりして、すごく面白いです！でも…キミ、ウラがどうやっても出てきません…URL貼ってもらえませんか？？ (2015年2月24日 0時) (レス) id: 7fcb3dc3f9 (このIDを非表示/違反報告)
あみ - とても楽しく読ませてもらいました。キミ・ウラのことなんですが、調べても出てこないんですかどうすれば見れますかね？ (2015年1月21日 0時) (レス) id: 669c637f3f (このIDを非表示/違反報告)
りょー(プロフ) - すみません。下のコメントですが、いけました！なので無視してください、笑。 (2014年9月28日 2時) (レス) id: ad37850f52 (このIDを非表示/違反報告)
りょー - 初めまして♪すごいおもしろくて一気にここまで読み進めてしまいました、笑。キミ、ウラのこと何ですが、作品一覧でもなくて、どういう形でも一時的でもいいのでURL載せて頂けませんか？我が儘すいません！次回更新も楽しみにしてます(´∀`*) (2014年9月15日 1時) (レス) id: ad37850f52 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：よしの
| 作成日時：2014年4月30日 14時
