忘れられない２ (ページ10)

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しばらくしたら、店長が来る。
後ろから、櫻井さんと雅紀くんが入ってきて、雅紀くんが私を見て、ちょっと嬉しそうに笑う。
居たー！って感じ。

「いくぞ」
「はい」
立ち上がったら、櫻井さんがえええって言う。
「どこいくの」

「Aと付き合うことにしたから」
みんなが、えっ！って顔をする。

「今日の夕飯のことですよ！」
なあんだって感じで皆が笑う。

「じゃあここでいいじゃん」
雅紀くんが言う。

「……大事な話があるから」
松本さんが、私の言うべき台詞を言った。
その言い方だったらまるで松本さんが私に大切な話があるみたいですよ？
なんとなく、戸惑ったような雰囲気のまま、いちいち訂正もせず、立ち去る。

近くのおいしいとパートさんの中で有名なお店に、お食事ラストオーダーで滑り込みで入れる。
ビールが手元に届いて、取り合えず、乾杯。
「セールお疲れ」
「売り上げ達成お疲れ様でした」
「まあそれはあたりまえ。で？話ってなに？」
「あの、先に店長に相談に乗っていただきたくて」
「……なんだよ！」
「異動願いを、出そうと思ってます」

「……はあ。あ、そっちか。辞めるっていうのかと思った」
店長が、ふふんって笑う。
「本社勤務を希望しようかと……バイヤーとか……」
「……うん」
「その前に、店長の経験が必要なら、店長候補で頑張りたいなと」

じろり。大きな目で見られる。
「それ、純粋に前向きな意見？」
「店長が何をおっしゃりたいのかわかりますが、それをきっかけに色々考えて出した答えです」
「お前ならいい店長になれるよ、パートさんとお友だちとか。甘いとこ直したらな」
「……」
「だけど、本社でのし上がってやろうと思ってるのはお前だけじゃないと思えよ？っつーかお前俺の後釜でここの店長やれよ」
「……異動をお願いしたいんですけども……」
「店長になりたいって言ってくれたら俺が上がれるかもしんねーのに、はあ？」
「わがまま……」
「まあ、いいよ、わかった、取り合えず声だけ上げとけば？期待すんなよ？俺は阻止する」

そこまで話すと、店長は自分のやりたいことを話し出した。
目がキラキラしてる。新しいブランドを作りたいって。そんな話。

「その下で働きたい！」
「……はあ？じゃあもっと使えるようになれよ」
「頑張る！」
食事が来て、店長がうまそうって目を輝かせる。
ペンギンとかごめんない。心の中で謝った。