忘れられない２ (ページ9)

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仕事が終わって、大野さんのところに行ったら、ニノがいた。

「おつかれ」
「お疲れ様です」
「いらっしゃい。ミルクティ？」
「はい」

ニノの横にひとつあけて、座る。
「避けてるでしょ」
「……え？ニノを？一個あけたから？つめる？」

椅子を一個ずらして隣に座ろうとしたら、くるな！って言われる。
「わけわかんない」
「Aがバカでわけわかんないのはこっちだ」
「……」
「避けてるのは、相葉さんのこと！」
「……避けてませんよ？」
「バレバレ。本人傷ついてる」
「いいんです、もう別に。彼女もうすぐできるし、そうしたら私のことなんて忘れますから」
「彼女？できないよ、多分」
ニノがケッって笑いながら言う。

「できますよー。あと一押しなのに！」
「その一押しを、やりたくないの、あのひとは」
「どうして？１年半ですよ、１年半片想いしたのに！バカでしょ？」
「あなたもね」
「……はいー……１年半ってとこまでバレてるとはー……」

「おまたせ」
ああ、いい香り。美味しい。聞いとかなきゃ。

「これ、自分でもいれられますか？」
「うん。煮立ててるんだけど」
「はい」
「丁度いいタイミングだけ覚えれば美味しくできる」
「葉っぱは何ですか？」
「これは、ディンブラ」
「へえ……買おっと」
「……思いつめたみたいな顔」

ちょっと、笑う。

「あと一押ししない理由、わたし気付いてるんだけど」
ニノが私を見てニヤニヤしてる。
「……別に、どうでもいいです。もう関係ありません」
「諦めんの？」
「もう、あきらめました。だから避けてて」
「やっぱ避けてるじゃん！馬鹿なの？まじでそれ天然なの？何？」
「……バカでーす」
ニヤニヤ笑ってる。
……あれ？今日はメガネかけてない。

「こないだ相葉さんに変なこと聞かれた」
「……」
「人を好きになるってどんな感情？って。わたしね、もうびっくり！今まで好きって言ってたの、なんだったのあれ！」
「……ああー……何言ってるんでしょうね」
「胸がぎゅーって苦しいの、なにこれー的な」
「……おばかさん……」
「だから、初めての感情にとまどって、まごまごしてるってわけ」
「それが恋だから当たって砕けろって言っておいてください。多分砕けないけど。ゆーちゃん告白されるの待ってるみたいだし」
「言っていいの？」
「いいです」
「わかったー」

大野さんが、小さい声で呟く。
「……砕けるぞ」
ニノがぷくくって笑う。