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「雅紀くんおはよ！きのうごめんね、なんか疲れてたみたいで」
「……あ、ああ、おはよ」
ちゃんと、挨拶できた？
戸惑う雅紀くんを見て、ごめんねっておどけたみたいに、両手を合わせて頭を下げる。
ほっとしたみたいに、笑う、雅紀くん。
ほんとはすっごい怒ってるかも。
でも、怒りより、口論したって後悔の方が彼を傷つける。
その日のお昼、雅紀くんがAちゃん、お昼いこって言ったけど、
先に行っててって伝えて、雅紀くんの休憩が終わる頃に、大野さんのところに行く。
入れ違いなら、話すこともないし、傷つけることもない。
そして、私がこれ以上好きになったり、傷つくこともない。
しずかに、大野さんの元で、傷を癒す。
夏のセールが終わって、一段落ついたころ。
思い切って、松本さんに、声をかけた。
「店長、お話があります」
私の顔を、チラッと見上げる。
「嫌」
知らん顔。酷い。
「店長？」
「仕方ねーな……誰もいないほうがいいよな、わかった、今日俺が終わるまで大野さんのとこでまっとけ、帰り、パスタでも食って帰ろうぜ。たまには大野さんじゃないとこ」
すっごい、嫌そうに言う。
「ありがとうございます」
「いらっしゃいませー」
ああ、ここでは全く聞いてくれない感じなんだ。
服を畳みながら、ふと目を上げたら、雅紀くんと目が合う。
ちょっと、笑う。
パートの泉さんが近づいてきて言う。
「検品と値つけ、おわりました。返品どうしますか？」
「あとで店長に聞いてからにする」
「はい。……あの、何かありました？」
「何が？」
「相葉さんと喧嘩？」
「どうして？」
「ここ最近、相葉さん、あの子じゃなくて、Aさんばっかり見てるから」
「ああ、喧嘩しました。一応仲直りしたけど、超ギスギスしてます」
笑いながら、言う。
「すっごい切ない目でみてるからかわいそうで。叱られた犬みたいな」
「叱られた犬？」
「おなかみせてごめんなさい！って感じの」
大野さんのとこの犬を思い出す。
もうかなり大きくなって、大野さんがだめでしょ！って言ったらしょんぼりする。
「可愛いじゃないですかー」
「だから可愛いんですってー」
「でもちょっとあれですよね、卑屈っぽい？」
「ああ、怒ってる？怒ってる？ってビクビクしててうっとおしい？」
「泉さんひどい」
笑ってたら、店長がギロリと睨む。
「給料泥棒め」
……キングペンギン店長、降臨。
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2014年2月21日 12時
