忘れられない２ (ページ7)

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「別に、いいよ、私。体だけの、お友だちとか……」
「何言ってんの？」
雅紀くんの、怒った声。

「私だって、寂しくて、死にそうなことあるもん」
「……」
「知らない誰かに、寄りかかりたくなることも、ある」
「知らない誰かに連れて行かれるんなら、俺に言って？なんでそんな知らないやつに……」
そこまで言って、言葉を切る。
ああ、ってため息を、吐く。

「今、寂しくて死にそうって言ったら、抱いてくれる？」
「……」
「例えば今雅紀くんが寂しくて欲求不満で、私が目の前にいたら、どうする？」

……長い、長い沈黙の果てに。

雅紀くんが、声を押し出す。

「Aちゃんは、大切な、友だちだよ……」

涙が、ぼろぼろって、落ちる。
「じゃあいい。帰る」
「送る！」
「ちゃんと、帰る。真っ直ぐ帰る」
「待って」
「来ないで！」

はっと、雅紀くんが立ち止まる。

「私、今日どうかしてる。明日から、またちゃんと私に戻る」
「……うん」
「でも、もう、二度と、私に恋愛相談しないで」
「……」
「もう、うんざり。一生片想いしてればいいんだ、意気地なし！」
「Aちゃん」
「雅紀くんなんて、だいきらい！」

雅紀くんが、がっくり、うなだれた。
泣きながら、走って丁度来た電車に乗り込む。

駆け込み乗車は危険ですのでおやめください。
車内のアナウンスが、流れる。

ガラガラの電車の中、眠ってる振りして、俯いて泣き続ける。
もう、耐えられない。

100回諦めようと思っても、101回目の大好きが来ちゃうんなら
101回目の諦めた時、102回目が、来なけりゃいいんだ。

ふと思いついて、葵さんの就労規則に目をとおす。
パートの場合。準社員の場合。社員の場合。

そっか。
異動願、出したらいいんだ。そうだ。
バイヤーになりたい。店長候補で頑張りたい。
いくらでも、私には道がある。

会わなくてもいい、方法が。

夏のセールが終わったら、店長に相談しよう。
それまで、いいお友達でいれるよう、我慢すればいい。

週に、数回のお昼の１時間だけ
大野さんが目の前にいてくれる。

それなら、きっと、さっきみたいに、感情を爆発させることもない。
いいお友達のまま、終わることができる。きっと。

静かに決意をしたけど、
涙だけは、いつまでも止まらなかった。