忘れられない２ (ページ46)

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「……俺の幸せなんか……」
「だから、異動願いっていうか、上の方にちょっとやる気を見せたんだけど、やる気の見せ方はやっぱ……きゃ」

松本さんの方がうわ手で敵わないって言おうと思って。
だから頑張って雅紀くんのこと諦めるから、
私のことは気にせずゆーちゃんと幸せになってねって、
そしてこれからも宜しくね、

って台詞は、
雅紀くんが思いっきり私の腕を引っ張って、
その勢いで雅紀くんの胸の中で私の鼻がどんってぶつかって、
そのまま私の頭と背中に長い腕をぐるんと回して思いっきりギュって抱き締めたから。

驚きと鼻の痛いのと、強すぎる抱き締めかたで、何にも言えなくなった。
「……っ！」
「Aちゃん」

きゅうううう。
苦しいよ、息できない！

「離して……」
「やだ」
「雅紀くん……あの」
「いや！離さない」
「……あの、息が苦し……」
「……へ？」
「力緩め……」
「……あ、ごめん！」

両手の力がフワッと緩む。
雅紀くんの胸におでこをあてて、大きく息を吸い込んで、ほ、と息をつく。
「……可哀想って思っちゃった？」
「……」
「２年もバカみたいに片想いして、まだ諦められないの、バカだなって、同情した？」
「あのね、上手く言えそうもないんだけど」
雅紀くんが神妙な声で呟く。

「……ん？」
「俺もずっと片想いしてたんだよね……」

……何いってんの？
「……知ってるよ？ゆーちゃんにでしょ？」
「……え？あ！違うよ！好きじゃなかったの、それは！好きって勘違いしてて！」
「……」
「Aちゃんにゆーちゃんとのこと応援してもらってて、Aちゃんも誰かにずっと片想いしてたから、だから気づかなくて」
「……んん？」
「俺、分からなくて……ほんとの好きってなんだ？とか全然知らなくて……」
「雅紀くん？何言ってるの？」
ちょっと笑いながら胸を押し返したら、また胸の中ですっぽり。
ぎゅーって抱き締められる。

「そろそろ離して？見られちゃまずいでしょ？その変な格好の理由も聞かなくちゃ、どうしたの？その……」
「黙って聞けー！」
「……雅紀くん、ちょっと整理してから話そうか？つまり？」
「つまり、つまり……」
雅紀くんが宙を見上げて一時停止。
「……何見てるの？……」
「未来」
んーと。ペンギン？

「……ペンギンみたいに寒さに強くないからそろそろ……」
「んもー！つまりこーゆーこと！」

雅紀くんが私のほっぺをむぎゅーって持ち上げて、ゆっくり。
……唇を重ねた。