忘れられない２ (ページ45)

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「あ！相葉さん！お疲れさまでーす」
「もう俺の名前覚えたのー！君すごー」
「そんなことないですよー」
「すごいよぉー！イエーイ」
ハイタッチ？
気があってる？

「ね、まさかAちゃん口説いてんの？」
「違うんですよぉ！一緒に帰ろーって言ってるのに逃げようとするんですー！可愛い後輩のお願いを酷いと思いませんー？」
「だねー？ひどいよー。でもね、Aちゃんは俺と一緒に帰る約束してるからね、待っててくれたんだよねー？」

……へ？
う、うん。こくこく。頷く。
「じゃ、３人で帰りましょ？」
「うん、今度ね？今日はねー。俺Aちゃんに大事な話があってー」
「えー、俺も聞いちゃダメ？」
「愛の告白聞きたいのー？やぼですよー！ね？Aちゃん、帰ろ！」
私の腕を掴んで雅紀くんが走り出す。

「えっと、清水くん、またね」
「愛の告白はね、愛の伝道師としては応援せざるを得ませんよ！相葉さん頑張って！お疲れさまでしたー！」
「俺の恋が叶うよう祈ってて？」
「任せてくださーい！」

さすがだ。さすが雅紀くん。
無邪気のNo.1。
雅紀くんは、最強だ。あの清水くんが負けた！
お礼言わなきゃ。

「雅紀くんありがと！」
「……」
「あの、雅紀くん？」
「……」
「雅紀くん……」
「俺ちょっと怒ってるんだけど」

雅紀くんが前を歩きながら言う。
「大野さんのお店はいかないの？」
「後輩がしつこくて追い払ってたから行けなかったって言えばいいでしょ」
「……」
前をずんずん、歩く。

「……どうして言ってくれなかったの」
「え？」
「異動の話」
「ああ、あれは」

急にピタッて立ち止まって、背中にトンって当たる。
「いた……」
「黙って行こうと思った？」
「……」
「俺のこと、もう呆れて嫌気がさした？」
「嫌になれないよ……」
「……」
「一生懸命好きなのやめようと思ったの。諦めようって、もう何百回も、思ったの。なのに、毎日好きになるんだもん」
「……え？」
「諦めようって決意してもね、また次の日やっぱり大好きって思っちゃうのに、どうやって忘れたらいいの」
「うん」
雅紀くんが振り返って、私を見下ろす。

「忘れられないの。忘れられない。だからね、会わなきゃいいんだって、会わなきゃいつか、きっと、って」
「Aちゃん」
「雅紀くんの幸せを、祈ろうって決めてたの。でもあのこと幸せに笑い合う姿見たらきっと痛くて死んじゃう。幸せ、祈れない」