忘れられない２ (ページ5)

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「そりゃ、女だって、人肌恋しいときも、ないことはない……」
ちょっとお酒も入ってて、適当なことをいう、私。
私がってことじゃなくて、一般論だけど。

「……そうなの？」
雅紀くんがひきつった顔で笑う。

「あるよ？私も寂しかったら、誰かに寄りかかりたくなることだってある」
「……A、かえろっか」
松本さんが、ため息を吐きながら言う。
「……だから、男の人が、そんな風になるのは仕方ないけど」
「……」
「もう二度と、私に恋愛相談のってとか言わないでね！」

雅紀くんを、睨んだら、ちょっと悲しそうな顔で私を見る。
「だから、何にもなかったんだってば……」

「私に言い訳しても、仕方ないでしょ？雅紀くんが、だれとどうなろうが、私には関係ないんだもん！」
お店の中が、しーんと静まり返る。

櫻井さんだけが、あれ？なんでこんな感じ？って不思議そうにしてる。
大野さんが、厨房から出てきて、困ったように笑う。

「Aちゃん、ちょっとこっち。外にね、犬の赤ちゃんいるの。」
「みる」
荷物を持って、大野さんの元に走る。

勝手口のところから、外に出る。
「翔ちゃんがごめんね、あのひとね、頭いいのに鈍感なんだ」
「……」
「冬にさ、あれでしょ、水族館いったのって、相葉ちゃんとでしょ？」
「……うん」
「……ちょっと待ってて、こっちおいで」

お店の裏手は、アトリエみたいなのとつながってる。
その中に、本当に犬の赤ちゃんがいた。

「わ……かわいい」
「かわいいでしょ。仮住まいなの」
「だっこしていい？」
「うん」
ぷるぷる震えてる。小さくて、弱々しくて。

「こんなこと言いたくないけど」
「うん」
「相葉ちゃんはね、多分一生気付かないよ、Aちゃんの気持ち」
「……」
「気持ち伝えたら、案外……」
「……あのね、大野さん」
「ん？」
「……ゆーちゃんって子なんだけど」
「うん」
「最近ね、ちょっとずつ、雅紀くんのこといいかもって思い出してるんだって」
「なんでしってんの！」
大野さんが、あははーって笑う。

「パートさん、ネットワーク」
「すげえな」
「すごいよ、敵に回したら一巻の終わり」
ふわふわ、笑う。

「あとはね、雅紀くんの頑張り次第なんだー」
「へえ」
「だから余計、腹が立ってきて」
「……うん。でもさ、Aちゃんは、頑張らないの？」
大野さんが、不思議に目の色を変えて、言った。